[古典名詩] 失楽園(第十巻) - 詩の概要

Paradise Lost (Book 10)

Paradise Lost (Book 10) - John Milton

失楽園(第十巻) - ジョン・ミルトン

罪を犯した人間への裁きと、地獄からの歓喜が交錯する巻

Meanwhile the heinous and despiteful actOf Satan done in Paradise, and howHe in the Serpent had perverted Eve,Her husband she, to taste the fatal fruit,
その間、楽園でサタンが行った忌まわしく侮蔑的な行為、蛇の姿をまといイヴを誑かし、運命をもたらすその果実を味わわせたこと――彼女の夫にも同様に罪を促した、その顛末がついに顕わになる。
Was known in Heav'n; for what can scape the eyeOf God all-seeing, or deceive his HeartOmniscient, who in all things wise and just,
このことは天界に知れ渡る。神の全能の眼から逃れられるものなどなく、絶対の知識と正義を兼ね備えた神の意志を欺くことはできない。
Hindered not Satan to attempt the mindOf Man, with strength entire, and free will arm'd,
しかし、それでも神は、完全な力と自由意志を授けられた人間の心を、サタンが試みることを阻止しなかった。
(excerpt)
(抜粋)

『失楽園』第十巻は、アダムとイヴが禁断の果実を食し、罪を犯した結果に対する神の裁きと、地獄側の反応が鮮烈に描かれる巻です。前巻(第九巻)においてイヴが蛇(サタン)の誘惑に屈し、アダムも愛ゆえにそれに追随することで“人間の堕落”が決定的となりましたが、この第十巻では、その行為がもたらす悲劇的な consequences が本格的に顕在化します。

まず、神がアダムとイヴの罪を知る場面において、全能で全知の神があえて“自由意志”を尊重したことが示され、あらためて人間の責任が強調されます。彼らは“恥”と“恐怖”の感情にとらわれ、互いを責め合い、無垢な愛が崩壊していくさまが痛切に描かれます。神が下す裁きにより、アダムとイヴは労苦や痛み、そして死といった概念を抱える運命を免れなくなるのです。

一方、地獄の場面では、サタンが見事人間の堕落を成し遂げたとして、悪魔たちが喝采を上げる様子が強く対照的に描かれます。しかし、彼らの勝利は決して安息にはつながらず、サタンが地獄に帰還すると、さらなる罰が彼らを待ち受けることが暗示されるのも大きなポイントです。ミルトンは、この巻の中で“悪の成功”に酔うサタンの姿と、“悪が本質的に持つ虚しさ”とを対比しながら、後の展開へ向けて読者の期待を高めています。

こうして第十巻では、人間と天界、そして地獄がそれぞれに動揺し、楽園からの追放が近づいていく緊張感が一気に高まります。ミルトンが詩中で繰り返し描く、“自由意志”と“神の正義”のテーマがより重くのしかかり、読者はアダムとイヴの悲痛な選択の行方を見届けることになるのです。

要点

• アダムとイヴの罪が天界に知れ渡り、神の裁きが下される決定的な転機
• 罪の結果として、“恥”や“痛み”“死”など、人間が初めて直面する苦悩が表面化
• 地獄ではサタンが人間の堕落をもたらしたとして悪魔たちと歓喜するが、その“勝利”には新たな罰の予感も漂う
• “自由意志”を尊重した神の計画と、それに伴う人間の責任が大きくクローズアップされ、物語は“楽園追放”へと突き進む

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