Palace Verse - Bai Juyi
/后宫词 - 白居易/
Palace Verse - Bai Juyi
/后宫词 - 白居易/
『後宮詞(こうきゅうし)』は、宮廷に仕える女官(あるいは妃嬪)が、かつての栄華や君王の寵愛を失ってしまった嘆きと孤独を、わずか四句に凝縮して描いた作品です。白居易は宮廷の華やかさの裏にある人生のはかなさや、愛の移ろいを、平易な言葉でありながら鋭く、かつ叙情的に描き出しています。
冒頭の「淚濕羅巾夢不成」は、涙が止まらず、まどろもうとしても夢さえ見られない切羽詰まった心境を示唆します。次句の「夜深前殿按歌聲」では、夜深く静まったはずの宮殿が、どこかで鳴り響く音楽を通じて、かつて自分が得たかもしれない歓びの場が今は別の者のものになっているという対比を暗示します。
三句目の「紅顏未老恩先斷」は特に印象的で、若さや美しさを失っていないにもかかわらず、すでに君王の関心はどこかへ移り、かつての栄華は夢のように遠のいてしまった現実を端的に示しています。最後の「斜倚薰籠坐到明」は、夜明けまでただぼんやりと座り続ける姿を活写し、孤独と諦念に満ちた心情を締めくくります。
白居易は宮廷や官僚世界の華美を描く一方で、それに翻弄される人々の姿も数多く取り上げています。本詩もその代表的な例で、王朝文学の定番である“後宮の盛衰”や“女官の悲しみ”というテーマを、簡潔かつ力強い表現で示しています。読む者にとっては、わずかな詩行の中に広がる人間模様と、無常観が深く胸に響く一篇といえるでしょう。
・宮廷の隆盛に隠された女官の悲哀
・若さと美貌を保ちながらも恩寵を失う無常観
・白居易の平易な言葉で描かれる深い哀感
・夜更けに響く音楽と朝までの孤独な時間が際立つ対照
・わずか四句に凝縮された、宮廷内の人間模様の一端