送区弘南归 - 韩愈
送区弘南归(そう くこう なんき す) - 韓愈(かんゆ)
送区弘南归 - 韩愈
送区弘南归(そう くこう なんき す) - 韓愈(かんゆ)
「送区弘南归」は、唐代の文人・政治家であった韓愈(かんゆ)が、親しい友人区弘(くこう)を南方の故郷へ送り出す際に綴ったとされる送別詩です。旅立ちの情景と旅への想いが繊細な言葉で描かれており、春を迎える南国の気配を羨みつつ、作者自身も帰郷の機を得ずに疲れ果てている様子が重ね合わされています。
詩の冒頭で示される「吾聞南地春更早」は、南方の温暖な気候を暗示しながら、まだ春の兆しが浅い作者の眼差しを引き立てます。続く句では、ともに過ごした日々への未練と別れの辛さが交差しながら、先立つ友を羨望混じりに見送る心情がにじみ出ています。中盤では、驛路(駅道)に連なる山川の壮麗さと、夢の中だけで一緒に飛翔できるという叙情的なイメージが印象深く、旅の楽しさと離別の寂寞を同時に表現するのが唐詩特有の妙味です。
後半になると、夜月に照らされる江辺の景や潮が引いた砂洲に舞うカモメの光景に、詩人の視線と感受性が投影されています。自然描写を通じて人の心の移ろいを重ねる手法は、韓愈の詩情の豊かさを示すとともに、時に厳しい官途を歩んだ彼の実体験がにじむかのようです。結びでは、別れを過度に悲しむことなく、再び再会した際には共に酒を酌み交わして思いの丈を語り合おうという温かい呼びかけで締めくくられています。唐代の送別詩らしい情趣にあふれた作品であり、友を思いやる気持ちが静かに、しかし力強く滲む一篇です。
・南国の早い春への憧れと、帰郷を得ない自身の状況を重ねた作者の複雑な心境
・唐詩特有の自然描写によって、別れの切なさや旅情を叙情豊かに表現
・友を送り出す側の立場から、再会への希望や酒宴への願いを込めた温かい結び
・韓愈の人生経験を反映した、官途の苦労や友への思いが詩全体ににじむ
・送別詩としての格式を保ちつつ、作者ならではの感傷と親密さが共鳴する