[古典名詩] 感讽五首(その一) - 秋の闇が映す人魂と哀愁

Satirical Reflections (No. 1 of Five)

感讽五首(其一) - 李贺

感讽五首(その一) - 李賀

秋宵の闇に宿る嘆きと幻影

金鋤暗斷秋宵夢,紅燭寒香掩夜泉。羽客不知魂已散,此中長嘯亦堪憐。
金の鋤が秋の夜の夢を密かに断ち切り、紅い灯火の冷たい香りは夜の泉を覆い隠す。仙人(はねびと)は、すでに魂が散ったと知ることなく、ここで長く嘆息するその姿が、いっそう哀れを誘う。
A golden spade severs midnight dreams in the autumn hush,A red candle’s chill fragrance veils the nocturnal spring.The winged immortal, unaware his soul has fled,Keeps howling in this realm, a sight that stirs our pity.

「感讽五首(その一)」は、唐代に活躍した詩人・李賀(りが)が、自身の内面の痛切な思いと社会への諷刺、あるいは儚い人生観を織り交ぜながら創作したとされる連作詩の一篇です。題名の「感讽」は、世の中の無常や人間の悲歓を詠いながらも、そこに辛辣な批判や嘆きを滲ませる意味合いを持ちます。

冒頭の「金鋤暗斷秋宵夢」では、金属的で硬質なイメージが秋の夜の儚い夢を無情に断ち切る様子を、鮮やかな対比で描き出します。唐代の詩人たちが愛用した“秋夜”というモチーフは、物悲しさや無常を表現するのにうってつけの背景であり、李賀特有の少し陰鬱で幻想的な筆致がここでも発揮されています。続く「紅燭寒香掩夜泉」は、熱を帯びるはずの紅い燭火でさえも、冷ややかな香りを放ち、夜の泉を隠してしまうという“不思議な静けさ”を強調します。

後半の「羽客不知魂已散」は、仙人(はねびと)や羽化登仙といった超常の存在を持ち込み、李賀が得意とする幻想世界を開花させます。彼の詩にはしばしば人間界と仙界、あるいは生と死の境目が曖昧に描かれる場面があり、この句もまた現実を超えた空間へ読者を誘います。しかし、「魂已散」とある通り、その仙人すらも魂が消え失せているとは知らず嘆き続けるという、切なさと虚無が同居した構成です。結句「此中長嘯亦堪憐」は、その嘆きがむしろ痛々しさを増幅させる締めくくりであり、読む者に深い余韻を残します。

李賀の作品は、“詩鬼”の名の通り、華麗さだけでなく、どこか怪異の香りを漂わせ、人生の無常感や内面の孤独を強く訴えるものが多いとされています。この詩もまた、ごく短い中に秋夜の寂寥、燭火の冷たさ、霊的存在の嘆きといった要素が詰め込まれ、感傷と幻想性を同時に楽しめる一篇となっています。

要点

・“秋宵”と“金鋤”が織り成す硬質かつ儚い情景
・紅燭や夜の泉が、李賀特有の神秘的なムードを助長
・仙界(羽客)を連想させるモチーフを通じて、生と死の境目を曖昧に表現
・秋夜ならではの寂寥感と痛切な嘆きが詩の全体を包み込む
・“詩鬼”と称される李賀の幻想的・叙情的な筆致が凝縮された短篇

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