[古典名詩] 失楽園(第三巻) - 詩の概要

Paradise Lost (Book 3)

Paradise Lost (Book 3) - John Milton

失楽園(第三巻) - ジョン・ミルトン

天界から見下ろす人間界と救済の希望が映し出される巻

Hail, holy Light, offspring of Heaven first-born,
おお、聖なる光よ、天界の長子として生まれた存在よ、
Or of the Eternal coeternal beam
あるいは永遠なる光源と永遠を共にする光の一筋よ、
May I express thee unblamed? since God is light,
罪なくあなたを言い表すことができようか。神そのものが光であるのだから、
And never but in unapproached light
しかも、近づくことすら叶わぬ純粋なる光の中にいる神を思えば、
Dwelt from Eternity, dwelt then in thee,
永遠よりあらゆる光と共に住まわれていたのだ。
Bright effluence of bright essence increate.
創造されざる輝ける本質の、さらに輝ける放射を放つあなたを敬おう。

ジョン・ミルトンの叙事詩『失楽園』第三巻では、舞台が地獄から天界へと移り、神とキリスト(神の御子)の視点が描かれる重要な展開を見せます。前巻まで、サタンと堕天使たちが人間界をどう攻めようか画策していた一方で、この第三巻では、神が“人間の堕落と救済”をどのように見ているかが描写されるのです。

冒頭では“光”への讃美から始まり、盲目になったミルトン自身の神への祈りが投影されているとも言われます。続いて、神が未来を見渡しながら、人間がサタンの誘惑によって罪を犯すことを予知しているシーンが登場します。しかし、神は同時に人間の自由意志を尊重し、救済の道をも用意しようとします。そこで“御子(キリスト)”が贖罪の役目を担うことを志願し、父なる神と対話する場面こそが、本巻の最大のクライマックスと言えるでしょう。

天上での視点から繰り広げられる神と御子の対話は、ミルトンの宗教観と人間観を余すところなく示す場面であり、同時に“人の自由意志”と“神の恩寵”の両立を深く考察させる構造になっています。人間がいかに罪を犯す運命にあるとしても、神の愛がどれほど大きいかを感じさせることで、作品は単なる“悲劇の前兆”ではなく、“救済への希望”をも含んだものとして読者を惹きつけるのです。

さらに、この巻でサタンは天界を離れ、人間界=地上の楽園(エデン)へ向かう旅路を開始します。『失楽園』の物語全体において、人間の堕落という大事件を起こす決定的な行動が、いよいよ具体化していくわけです。天界での神と御子による“計画”と、地上へ近づくサタンの陰謀が並行して描かれ、読者は壮大なスケールの“聖と俗”の対比を体感しながら、物語の核心へと徐々に引き込まれていきます。

要点

• 舞台が天界へ移り、神と御子(キリスト)の視点から人間の運命が語られる
• “光”への呼びかけに、盲目のミルトン自身の祈りが投影された序曲
• 人間の堕落と自由意志、そして救済の計画を神が示し、キリストが贖罪を申し出る感動的な場面
• サタンは地獄を離れ、人間界へと向かう旅を開始し、物語の核心へ向けた伏線が一層高まる巻

楽しい時は時間が経つのが早いですね!
利用可能な言語