[古典名詩] 望廬山瀑布(其一) - 峻峰に落ちる壮麗な水の一瞬を捉えた詩情

Viewing the Waterfall on Mount Lu (Part I)

Viewing the Waterfall on Mount Lu (Part I) - Li Bai

/望庐山瀑布(其一) - 李白/

香炉の紫煙と天より流れ落ちる瀑布を仰ぐ詩仙の絶景賛嘆

日照香爐生紫煙,
日の光が香炉峰を照らすと、紫の煙が立ちのぼる。
As sunlight bathes the Incense Burner Peak, purple mist rises into the air.
遙看瀑布掛前川。
遠くに目をやれば、滝が前方の川にかかっている。
From afar, the waterfall appears draped across the river below.
飛流直下三千尺,
飛ぶがごとくまっすぐに三千尺を落ち,
It plunges straight down some three thousand feet,
疑是銀河落九天。
まるで天の川が九天の彼方から流れ落ちてきたかのようだ。
As though the Silver River cascaded from the Ninth Heaven.

「望廬山瀑布(其一)」は、唐代の詩人・李白が中国江西省にある廬山の壮大な滝を目の当たりにし、その圧倒的な情景を四句に凝縮した作品です。冒頭の「日照香爐生紫煙」では、香炉峰が朝陽を浴びて霧が紫色に染まって立ちのぼる様子を描き出し、見る者の視線を一気に山の頂きへと導きます。続く「遙看瀑布掛前川」では、遠くから望む滝がまるで白い帯を垂らすように、目の前の谷へと懸かっている情景を示し、その奥行きのある視野が広がるような感覚をもたらします。

第三句「飛流直下三千尺」は、おなじみの誇張表現を用い、滝がまるで空から飛び降りるかのようにすさまじいスケールをもって落下している様を強調しています。これは、李白の特徴でもある誇大かつ大胆なイメージを通じて、自然の偉大さを読者に強く訴えかけているのです。最後の「疑是銀河落九天」で、天上の銀河が九重の空から流れ落ちるかのような幻想的な比喩を用いることにより、現実の景観と神話世界を結びつけ、壮麗さの極みに引き上げています。

李白の多くの詩には、神仙思想や自由奔放な気質が投影されることが多く、本作もまた、そのような“天地を超越する視点”が際立ちます。実際の滝の高さや迫力を凌駕するほどの表現を駆使し、読者の想像力を天空へと誘う手法は、唐詩の典型的な美学でもあります。そこには現実離れした光景を追求することで、人の心を解放し、限りないロマンへと飛翔させる李白ならではの精神が垣間見えます。

また、この詩は視覚や聴覚、さらには神話的な比喩を重ね合わせることで、短い中に多彩なイメージを織り込んでいます。わずか四句でありながら、堂々たる山の気配と、水が砕け散る音、そして天空から落ち来る幻の川のような様相がひとつに結び合い、読む者を夢中にさせる魅力を放ちます。まさに唐代を代表する山水詩の名作であり、李白の壮麗な世界観を知るには欠かせない一篇と言えるでしょう。

要点

・香炉峰と滝の壮大な景観を一瞬にして捉える力強い叙景
・誇張表現と神話的な比喩を用いて自然を神秘的に引き立てる手法
・わずか四句の中に、山水詩の魅力と李白の幻想的世界観が凝縮
・天上と地上を結びつけ、読者の想像力を天空へと解き放つ詩的技巧

楽しい時は時間が経つのが早いですね!
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