On His Blindness - John Milton
On His Blindness - ジョン・ミルトン
On His Blindness - John Milton
On His Blindness - ジョン・ミルトン
このソネット「On His Blindness」は、ジョン・ミルトンが視力を失ってから抱えた葛藤や神への疑問、そして最終的な悟りを描いた作品です。彼は自らの才覚(Talent)を使って神に仕えることを人生の使命としていましたが、若くして盲目となったため、その才能を十分に活かせず、神に対して“光なき日常でも仕事を求められるのか”と問いを投げかけます。
作中では、この疑問に答えるかのように“Patience(忍耐)”が登場し、神は人間の労働や才能を必要としていないこと、神が求めるのは“従順”と“信頼”であることを説きます。ミルトンは自分の苦悩を通じて、神への奉仕とは派手な行動だけでなく、困難の中でも心を正し、穏やかに待ち続ける態度にも価値があるのだという結論に至ります。
彼が描くのは、単に“盲目になった詩人の嘆き”ではありません。むしろ、どれほど困難な状況でも“神の計画”を受け入れ、自分にできる最善の形で仕えようとする姿勢です。このソネットは、その静謐な決意が繊細な韻律と響き合いながら深い余韻を残します。盲目という現実を受け入れつつも、神への信仰を失わない内面的強さ、そして自分自身の役割を再定義する思索の過程が、14行という短い形式に凝縮されているのです。
『失楽園』や『復楽園』などの大作で知られるミルトンですが、この「On His Blindness」は彼の詩人としての内面を知るうえで大切な作品と言えます。彼が自分の境遇をどう受容し、神との関係をどう築き直したのかという核心が、このソネットに端的に示されているからです。そして、そのメッセージは“苦境にあってもなお、自分なりに最善を尽くせばよい”という普遍的な励ましとして、多くの読者の心に響き続けています。
• 若くして視力を失ったミルトンが、神への奉仕と才能の活かし方を問いかける
• “Patience”が象徴的に登場し、“待つこと”自体が神への奉仕になり得ると説く
• “才能”や“行動”よりも“従順な信仰”に重きを置く神観が色濃く示される
• 全14行のソネット形式で、ミルトンの内面と神学的思索が緻密に凝縮された詩