[古典名詩] 失楽園(第十二巻) - 詩の概要

Paradise Lost (Book 12)

Paradise Lost (Book 12) - John Milton

失楽園(第十二巻) - ジョン・ミルトン

楽園追放の果てに示される人類史の展望と、救済への希望を宿す最終巻

Henceforth I learne, that to Obey is best,And love with feare the onely God, to walkeAs in his presence, ever to observeHis providence, and on him sole depend.
これより私は学ぶのだ——従順こそが最善であり、畏敬の念をもって唯一の神を愛し、その御前にいるかの如く歩み、神の摂理を常に見守り、ただ神のみを頼りにすることを。
(excerpt)
(抜粋)

ジョン・ミルトンの大叙事詩『失楽園』を締めくくる第十二巻では、前巻の第十一巻で天使ミカエルがアダムに示した“未来の人類史”のビジョンがさらに語られ、アダムとイヴの最終的な運命—すなわち“楽園追放”—が具体的に実行されます。第十一巻に引き続き、ミカエルはアダムへ旧約聖書から新約聖書に至る壮大な流れ(アブラハム、モーセ、ダビデ、そしてメシア=キリスト降臨と贖罪)を示すことで、人間が罪を抱えながらも救済へと向かう道のりを示唆します。

アダムは自らの罪と未来の悲劇的な歴史を痛感しつつも、同時にメシアによる贖罪を通じて“神との和解”と“永遠の命”が約束される可能性に希望を見出します。一方、イヴもこの話を部分的に共有し、再びアダムと心を合わせて神に仕えようという覚悟を固めていきます。神は最終的にアダムとイヴへ“エデンを去る”ように命じ、天使たちが彼らを楽園の門から外へ導く場面で物語はクライマックスを迎えます。

ラストシーンでは、ミルトンがアダムとイヴの手を携え合う姿を描き、“我らはこの先、荒れ果てた世界を生き抜くが、神への忠誠と愛を胸に歩む”という決意が強調されます。そこには“喪失”と“希望”が同時に宿っており、作品全体のテーマである“自由意志”“罪”“救済”が余韻の中で深く読者の心に刻まれます。こうして『失楽園』は、悲劇的な結末でありながらも、未来に伸びる光の可能性を暗示する形で幕を下ろすのです。

要点

• ミカエルのビジョンを通じて、旧約・新約聖書に至る壮大な人類史と救済の道がアダムへ明示される
• アダムとイヴは最終的にエデンを追放されるが、メシアによる贖罪の希望を得て、神を信じ再起を誓う
• “罪と自由意志”というテーマが、救済への可能性を含んだ形で最終的に収束
• 悲劇の中にも“神との和解”を信じて生き抜く人間の姿が、ミルトンの思想を象徴する余韻として描かれる

楽しい時は時間が経つのが早いですね!
利用可能な言語