[古典名詩] 失楽園(第七巻) - 詩の概要

Paradise Lost (Book 7)

Paradise Lost (Book 7) - John Milton

失楽園(第七巻) - ジョン・ミルトン

ラファエルが語る神の創造の壮麗、エデンでの創世記を描く巻

Descend from Heav'n Urania, by that nameIf rightly thou art call'd, whose Voice divineFollowing, above th' Olympian Hill I soar,Above the flight of Pegasean wing.
天の高みより降り来たれ、ウラニアよ。その名が正しく呼ばれるならば、神聖なる汝の声を追って、我が身はオリュンポスの丘よりも高く舞い上がり、ペガサスの翼の飛翔をも超えてゆくのだ。
The Meaning, not the Name I call, for thouNor of the Muses nine, nor on the topOf old Olympus dwell'st, but heav'nly-born,Before the Hills appear'd, or Fountain flow'd.
私は汝の呼び名ではなく、その本質を呼び求める。汝は九柱のムーサの一人でもなく、古きオリュンポスの頂に住むわけでもない。泉が湧き出で、山々が姿を現わす以前より、汝は天界に生まれし存在なのだ。
... (excerpt) ...

『失楽園』第七巻では、天使ラファエルがアダムに語る“天地創造”の物語が大きなテーマとなります。前巻までで天界の大戦争や堕天使の動向が描かれましたが、この巻では一転して、世界や生き物がどのようにして神によって“無”から創造されたのかが、詳細に語られるのです。ラファエルが“ウラニア”――天上の霊感に呼びかける序詞に始まり、神がいかにして光や天体、大地、海、そして動物や人間を形作ったかが、聖書の創世記を下敷きにしつつも壮麗な詩語で描かれます。

アダムはまだ罪を知らず、“世界がどのように誕生したのか”を純粋な好奇心と敬虔な心でもって問いかけ、その疑問にラファエルが答える形で物語は進みます。ジョン・ミルトンは、神の創造の過程を通じて“秩序と調和”、そして“人間のために整えられた環境”を強調し、同時に“自由意志”と“創造主への感謝”を結びつける視点を提示しているのが特徴です。

さらに天使ラファエルの言葉を借りて、ミルトンは“天上の霊感”がもたらす力と、芸術家(詩人)としての自らの使命を重ね合わせるかのように表現します。地上の理に囚われず、“天的な観点”を得ることで初めて、大いなる創造の真意を垣間見ることができる――そうした世界観が、この巻の核心に据えられています。

要点

• 天使ラファエルがアダムに“天地創造”を語り、世界の生成過程が壮麗に描かれる
• 神が“無”から光・天・海・陸・生物を次々に創造する様子が、聖書の創世記を下敷きに叙事詩的に展開
• “天上の霊感”を賛美する序詞で、ミルトンの詩人としての使命感や信仰心を印象付け
• アダムの純粋な探求心と、人間が神から与えられた“環境”や“自由意志”への感謝が深く結びつく巻

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