Peach Blossoms at Dalin Temple - Bai Juyi
/大林寺桃花 - 白居易/
Peach Blossoms at Dalin Temple - Bai Juyi
/大林寺桃花 - 白居易/
この詩は、白居易が大林寺(山寺)で見かけた遅咲きの桃の花を詠んだ作品です。平野ではすでに花々が散ってしまった四月でも、山の寺では春がなお息づき、まるで別の世界が存在するかのような新鮮な驚きを感じる場面が描かれています。
冒頭の「人間四月芳菲盡」で示されるように、里の四月には花の盛りが過ぎて寂しくなっているという前提があるからこそ、続く「山寺桃花始盛開」の対比が際立ちます。山の中腹や高所では気温が低いため、花の開花が遅れることがありますが、それを季節のずれという自然現象だけでなく、ひとつの“発見”や“驚き”の視点で描いているのがポイントです。
後半の「長恨春歸無覓處」は、詩人が常日頃から“春がいつの間にか去ってしまう”ことを嘆いてきたことを示唆します。しかし「不知轉入此中來」で、実は春は完全に消えてしまったのではなく、ほかの場所——ここでは山寺——に姿を変えていたのだと知るのです。まるで春そのものに再会したような感動が込められています。
白居易の詩の魅力は、平易な言葉を用いながら、生活や自然のなかに潜む深い情感を描くところにあります。『大林寺桃花』では、季節の時差や山岳の気候を背景に、見落としがちな春の続きがしっかりと別の場所で息づいているという発想が印象的です。実際の季節感と、詩人の繊細な心の動きとが重なり合い、読後に自然の奥深さや人間の感受性の豊かさを思い起こさせます。
・平地と山寺の開花の時差が、春の新鮮な驚きをもたらす
・春が過ぎたと思いきや、別の場所でまだ続いているという発見
・白居易の平易な言葉遣いによる鋭い自然観察力
・“春の行方”への関心と、再び巡り会えた喜びを感じる詩情
・自然の多様性と詩人の繊細な感性の融合が生む余韻