曲玉管(陇首云飞) - 柳永
曲玉管(きょくぎょくかん)「陇首云飞」 - 柳永(りゅう えい)
曲玉管(陇首云飞) - 柳永
曲玉管(きょくぎょくかん)「陇首云飞」 - 柳永(りゅう えい)
「曲玉管(きょくぎょくかん)『陇首云飞』」は、北宋の詞人・柳永(りゅう えい)が描いたとされる名篇の一つであり、荒涼とした秋の風景を背景に、旅の憂いや離別の感情が濃厚に漂う作品です。題名の「曲玉管」は詞牌(韻律や字数が決まった詞の形式)の名称で、旋律の起伏に合わせ、抒情性の高い詩句を構成しやすい点が特徴とされています。
冒頭の「陇首云飞,江边夜雨,画角声中人未归」では、陇首(ろうしゅ)の山々に漂う雲や、川辺に降り続く夜の雨といった秋の気配が強調され、遠く響く画角(角笛)の音が旅情と哀愁を増幅させます。続く「一叶扁舟,不堪今夕,凭栏空忆旧时期」は、小舟や欄干といった具体的なイメージを通じ、主人公の孤独感が読者の胸に強く迫る構成になっています。
後半の「羁愁几度,又是寒蛩凄切,月冷天涯」は、旅先や辺境の地に身を置く者の繰り返される憂いと、夜の静寂の中で鳴く蟋蟀の寂しげな声が重なり合い、詩人の心をますます締めつけるような情緒を生み出します。ここに登場する月の光は遠く離れた故郷の空にも通じる象徴でありながら、同時に冷ややかなまでの広がりを持ち、かえって心のさびしさを際立たせるのです。
柳永は官僚として大成しなかった一方、民間や歌妓の間で大きな人気を得ており、男女間の繊細な情感や旅の憂いを豊かに描く詞風を確立しました。本作でも、秋の夜の寒さと壮大な自然を背景に、人の意志を超えた運命や別離が強調され、そこに作者自身の深い感傷が滲み出ています。短い詞の中に秋の萧瑟(しょうせつ)と旅の痛切な思いが結びつき、宋詞特有の叙情美を堪能させる名品と言えるでしょう。
・陇首(ろうしゅ)の山と夜の雨が秋の旅情を強調
・一葉の舟や欄干にもたれる姿が、孤独や望郷の思いを視覚化
・蟋蟀(こおろぎ)の声や冷たい月光が、秋夜の寂寞をさらに増幅
・柳永ならではの繊細な比喩と民衆的人気が、今も人々の心を打つ
・短い詞に、自然描写と人間の感情が融け合う豊かな叙情が凝縮されている