[古典名詩] 賦得古原草送別 - 草に映し出される生命力と別離の情感を描いた白居易の名篇

Farewell on the Ancient Plain with Grass

Farewell on the Ancient Plain with Grass - Bai Juyi

/赋得古原草送别 - 白居易/

遠く続く草原に重なる別れの情を詠んだ詩

離離原上草,
原の上に茂る草は、青々と群れなすばかり。
Boundless grass covers the plain, flourishing in lush green.
一歳一枯榮。
年ごとに枯れもまた栄え、繰り返されていく。
Year after year it withers and thrives, in endless cycle renewed.
野火燒不盡,
野火で焼かれようとも、そのすべては消え去らず、
Though wildfires sweep the fields, they cannot destroy it all,
春風吹又生。
春の風がそよげば、またも生い茂る。
For once spring breezes blow, the grass grows again.
遠芳侵古道,
遠く広がる香りが、古い道を覆い尽くし、
Fragrant sprouts stretch far, enfolding the ancient road,
晴翠接荒城。
晴れわたる空の緑は、荒れた城跡へと続く。
Their emerald sheen reaches out to the deserted fortress walls.
又送王孫去,
またも王孫(友人)を見送るときが来たが、
Once again, I bid farewell to my noble friend,
蕭蕭滿別情。
風にそよぐ草のように、別れの思いは満ちあふれる。
As the rustling grass brims with sorrows of parting.

「賦得古原草送別(ふとく こげんのくさ そうべつ)」は、春の草原の力強い生命力を背景に、別れの情を凝縮した白居易の代表的な五言律詩です。この詩は、別れの友人を見送る際に見た草原の光景が、枯れては再び芽吹く草の営みと、人生のはかなさや繰り返し訪れる再会や別離を重ね合わせるかたちで描かれています。

冒頭の「離離原上草」は、原野に広がる草が青々としげり、ひと目で草原の広大さとその美しさを思わせる印象的なフレーズです。「一歳一枯榮」と続く二句目では、草が毎年枯れたり、また生い茂ったりと繰り返す自然の営みを端的に示し、人の世における栄枯盛衰や循環を象徴的に暗示します。

「野火燒不盡,春風吹又生」の対句は特に有名で、どれほど焼かれようとも、暖かな春風とともに再び芽吹く草の不屈の生命力を見事に表現しています。まるで、幾度挫けても立ち上がる強い意志や、人の世の息づく希望を感じさせるようです。

後半の「遠芳侵古道,晴翠接荒城」は、古い道や荒れ果てた城にまで伸びる草の勢いが、歴史の移ろいや物事の盛衰に対する詩人の感慨を際立たせます。古と今とを結ぶ草の存在は、時代を超えた普遍の生命力を暗示し、同時にそこに漂う寂寞さが別れの情と相まって切なさを増幅させます。

結びの「又送王孫去,蕭蕭滿別情」は、友人を見送る際の作者の心情を、草がそよぐ「蕭蕭(しょうしょう)」という擬音を通じて巧みに表現した部分です。草原に風が吹けば、その音が胸の奥に響き、別離の哀愁がいっそう深まるような印象を受けます。

この詩は五言律詩の定型と美しい対句の技巧を備え、かつ自然と人情を重ね合わせる白居易ならではの表現が光ります。草というごく身近な題材を通じて、強靱な生命と別れの悲しみ、さらには時の流れの容赦なさをも感じさせる名作として、古くから多くの人に愛されてきました。

要点

・繰り返し芽吹く草と人生の栄枯盛衰を重ね合わせた視点
・「野火燒不盡,春風吹又生」という、不屈の生命力を象徴する名句
・友人との別れを草原の風景になぞらえた叙情的表現
・白居易特有の平易で明快な言葉選びが読者の心を打つ
・短い詩の中に春の活気と哀愁、人生の普遍をまとめあげる巧みさ

楽しい時は時間が経つのが早いですね!
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