Spring Longing - Li Shangyin
/春心 - 李商隐/
Spring Longing - Li Shangyin
/春心 - 李商隐/
『春心(しゅんしん)』は、李商隠(りしょういん)の名が付与されて伝わる詩ですが、現存する定本がはっきりせず、多くが後世の詩話や類書の一部に断片的に残されているのみと推測されています。題名に「春心」という文字を持つ以上、春の情感や恋心を中心に据えた内容が想定され、李商隠特有の艶麗かつ晦渋な恋愛詩や抒情詩とスタイル上の類似が見られると言われます。
上記の推定再構成された四句では、まず「花影」「緑煙」といった春の景物が、ごく短い表現のなかで活写され、そこに失われた夢や昔の愛を暗示させる余韻が漂います。李商隠の恋愛詩にはよく登場する「柳絮(飛絲)」や「灰になるまで燃え尽きる想い」の比喩が、ここでも用いられていますが、これが原作に忠実かどうかは不明です。
「春心暗與飛絲繫」の一句には、春の微かな風に乗って舞う柳絮と、作者の胸に秘めた想いが絡み合うイメージが示唆され、唐詩特有のロマンチックな風情を醸成しています。さらに結句の「一寸相思一寸灰」は、深い恋心が尽きるとき、灰に等しいむなしさを残す――李商隠が得意とする“愛の激しさ”と“絶望感”を重ね合わせた巧みなフレーズといえます。
ただし、このような断句が本当に李商隠自身の筆か、あるいは後代の模倣や誤伝が混じったものかは、学術的には確証が得られていません。それでも、“春の抒情”や“恋の儚さ”という李商隠特有のモチーフが随所に見られる点から、当時の李商隠詩のエッセンスを反映している可能性も高いでしょう。
• 題名からうかがえる「春の心」をめぐる艶麗かつ儚いイメージ
• 花影や柳絮など唐詩の定番モチーフを駆使し、李商隠らしい恋愛詩の要素を暗示
• 短い断句の中に、昔日の夢と今なおくすぶる想いが交錯
• 現存する定本が不明な詩のため、伝承や推測に基づく再構成で読む楽しみがある