十一月四日风雨大作(其二) - 陆游
十一月四日風雨大作(その二) - 陸游(りくゆう)
十一月四日风雨大作(其二) - 陆游
十一月四日風雨大作(その二) - 陸游(りくゆう)
「十一月四日風雨大作(その二)」は、南宋の愛国詩人・陸游(りくゆう)が晩年に詠んだとされる七言絶句です。同じ題名の作品が二首あり、こちらはその第二首に当たります。
第一首(「僵卧孤村不自哀…」)が、夜中の嵐の音を聞きながら戦場への未練を夢に見る内容であったのに対し、本作はさらに日常的かつ静謐な情景に焦点を当てています。辺境の地あるいは田舎の村で、風雨が荒れ狂うなかでも落ち着いて火に当たり、飼い猫とともに外へ出ることなく過ごす姿が描かれ、どこか余裕と諦観が混じり合った独特の雰囲気を醸しています。
宋代の政治や軍事の混乱を背景に、陸游は生涯を通じて祖国の統一と中原奪還を訴え続けました。しかしながら、思うように実現しない現実と、自身の加齢による体力や気力の衰えもあって、晩年には半ば隠遁生活に入らざるを得なかったとも言われます。そうした境遇を反映するように、この詩には表立った激情や悲壮感はあまり感じられず、むしろ自然の猛威を前にしても静かに身を処し、己が置かれた境遇を受け止める姿勢がうかがえます。
「四山声作海涛翻」の句は、四方を囲む山々の轟音が海の大波のように唸る様を想起させ、自然の豪壮さを生き生きと伝えます。一方で「溪柴火软蛮毡暖」といった描写は、素朴ながらも暖かな生活感を象徴しており、荒々しい風雨と対照的な安らぎをも表しています。最後の「我与狸奴不出门」は、愛猫を含む小さな安住の世界が、作者にとっていかに大きな精神的支えになっているかを物語ります。
陸游といえば強烈な愛国心と戦意をもって詩を書いた人物として有名ですが、本作ではそうした面よりも、年老いた詩人が自然に寄り添いながら静かに暮らす心境が際立ちます。激動の人生を送りながらも、最終的には平穏な日常の中に安らぎと小さな幸せを見出す――そんなメッセージを感じとることができるでしょう。もちろん、背後には国への未練や時局への不満が消えたわけではないでしょうが、それらすべてを抱えつつも受容しようとする晩年の悟りのようなものが、この短い詩句に凝縮されているように思えます。
・猛烈な風雨と、穏やかな室内の対比が際立ち、晩年の陸游の境地を象徴
・外界の嵐に動じることなく、愛猫と暖をとるという静かな生活感が、苦難に満ちた生涯の安息を映す
・第一首と比べ、隠遁的な落ち着きと、人生を俯瞰するような視点が強調されている