书愤(早岁那知世事艰) - 陆游
書憤(しょふん)(早歳那知世事艱) - 陸游(りくゆう)
书愤(早岁那知世事艰) - 陆游
書憤(しょふん)(早歳那知世事艱) - 陸游(りくゆう)
南宋の詩人・陸游(りくゆう)は、中国文学史でも屈指の愛国詩人として知られています。「書憤(早歳那知世事艱)」は、北方の異民族に奪われた中原を奪還したいという激しい思いと、自らの老いを嘆く心情が交錯する名作です。
冒頭の「早歳那知世事艱」は、若い頃には人生や世事の厳しさを知らなかったという率直な回想から始まります。しかし続く「中原北望気如山」に見られるように、詩人の気概は失われておらず、北方へと視線を向け、祖国の奪還を願う強烈な思いが示されています。
中盤では「楼船夜雪瓜洲渡」「铁马秋风大散关」といった具体的な情景描写を通して、かつては戦地や辺境を目指して雄々しく乗り出した若き自分を回想し、その気迫をいまなお忘れていないことを暗示します。一方で、「鏡中衰鬓已先斑」は、現実には年月を経て髪も白くなり始めている現状を突きつけるもので、理想と現実の乖離が詩人の胸に痛切な寂寥感を生じさせます。
結句の「出师一表真名世,千载谁堪伯仲间?」では、諸葛亮が遺した『出師表』を引き合いに出して、時代を超えてなお人々に名声を残せるほどの大業を成し遂げたいという願望を示すと同時に、その偉業に匹敵し得る者はいったい誰かと問いかけています。これは陸游自身の、祖国を守り抜きたいという夢や功績を立てたいという願望が、歳月による衰えを経てもなお燻り続けていることの表れと言えるでしょう。
こうした激烈な愛国心と、自分の力ではどうにもできないもどかしさや老いへの嘆きが混在するところに、この詩の大きな特徴があります。南宋の政治情勢や軍事の現実を知れば知るほど、陸游が置かれた状況の苦悩が生々しく伝わってくるのです。本作は、彼の生涯を映し出す鏡のように、理想に燃えつつも現実との葛藤を経てなお、意気を捨てることなく奮い立とうとする姿勢を明瞭に示しています。
・若き日の理想と、歳月を経た今との対比が鮮明
・諸葛亮の「出師表」を引き合いに、自らも歴史に名を残したい願望がにじむ
・中原奪還への愛国心と、自身の衰えへの葛藤が生々しく描かれ、陸游の個性が際立つ