[古典名詩] 采地黄者 - 貧苦の中で薬草を採取する人々の姿に光を当てる白居易の視点

Gatherers of Rehmannia

Gatherers of Rehmannia - Bai Juyi

/采地黄者 - 白居易/

貧しき暮らしと薬草採りを通して社会を見つめた詩

曉入荒山採地黃,
夜明けに荒れた山へ足を運び、地黄の根を掘り集める。
At dawn, I venture into the desolate hills, digging up rehmannia roots.
霜泥滑徑草茫茫。
霜にぬれた小道はぬかるみ、草むらが広く続く。
The frosty paths grow slick with mud, a vast expanse of grass sprawling ahead.
衣衫破盡寒風急,
着古しの衣はほころび、冷たい風が身を刺す。
My tattered robe offers little shelter from the biting wind.
籃底空空露水涼。
籠の底はまだ空っぽで、露の冷たさが肌をつたう。
The basket remains nearly empty; dew seeps in with a chilling touch.
不知此藥能療病,
この薬草が病を治す力を持つと知らぬ者もいようが、
Some may not know the healing power of this herb,
但願微薪可度糧。
ささやかな収入でも、飢えをしのぐ糧になることを願うばかり。
But I pray a meager profit can buy enough to keep hunger at bay.
卻恨官家征賦重,
だが嘆かわしいのは、官の賦役があまりにも重く、
Alas, the burden of state taxes weighs heavily on us all,
使人終日淚成行。
人々は一日中涙をこぼし、嘆きの底に暮れてゆく。
Forcing tears from dawn till dusk among the struggling folk.

この『采地黄者』と題された詩は、白居易が貧しい庶民と社会の矛盾を描いたと伝えられる作品の一例として再構成したものです(実際には定本が明確に伝わっておらず、後世の文献でも確たる形で引用されることが少ないとされます)。

詩の中心モチーフは、山野に育つ地黄(じおう)という薬草を掘り集め、それを売って糧としようとする貧民の姿です。霜や露、泥に阻まれながらも、彼らが根を掘らねば生活が立ちゆかない状況が切実に語られます。白居易の作品には、実際に官僚でありながら農民や庶民の生活に寄り添う視点が多く、重税や格差への批判を詩で表現することが度々見受けられます。

前半では、夜明けのまだ薄暗い時間帯に野山へ向かい、ほとんど空の籠を背負って露に濡れつつ薬草を採る過酷な状況が描かれます。後半にかけては、それがどれほど僅かな収入でも自分や家族を養う糧になるという切迫感が表され、一方で国や役所に納める税負担が重くのしかかっていることも暗示されます。収穫した薬草が本来は病を癒やす力を持つはずなのに、それが純粋に医療目的だけでなく“生計をどうにか成り立たせるための手段”として使われるところに、庶民の厳しい現実が象徴されているのです。

白居易の詩風は、難解な言い回しを避け、平易な表現をとおして社会の矛盾や民衆の窮状を直截的に描くことに特徴があります。本作(再構成版)も同様に、読者が当時の情景をありありと思い描けるようなリアルな筆致と、弱者に寄り添う視点が感じられます。こうした庶民の生活と政治的・社会的構造を見つめる姿勢こそ、白居易が時代を超えて多くの人々に読まれている理由の一つといえるでしょう。

要点

・薬草を採取して糧とする貧民の過酷な生計
・庶民の労苦と重税・賦役に対する社会的批判
・自然描写を交えつつ、生活苦に直面する人々の姿をリアルに表現
・白居易ならではの平明で叙情的な文体
・文学を通じて庶民の窮状を描き出し、問題提起する詩人の視点

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