[古典名詩] 少年游(しょうねんゆう)「长安古道马迟迟」 - 詩の概要

Young Wanderer’s Song (On Chang'an’s Ancient Roads)

少年游(长安古道马迟迟) - 柳永

少年游(しょうねんゆう)「长安古道马迟迟」 - 柳永(りゅう えい)

遠き故郷を偲ぶ秋の夕暮れに揺れる旅愁

长安古道马迟迟,
長安への古道に、馬の足どりもゆるやかに続く、
On the ancient road to Chang’an, horses plod at a languid pace,
高柳乱蝉嘶。
高々と伸びる柳の間で、蝉が混じり合って鳴く。
Amid tall willows, cicadas cry in a tangled chorus.
夕阳陡落寒烟起,
夕陽が急に沈むと、冷えた煙が立ち上り、
As the sun abruptly sets, a chill haze rises,
无奈风吹,
抗えぬ風に吹き払われて、
Unstoppably dispersed by the wind,
飘泊天涯计。
遥か彼方へと流離うばかりの身の上よ。
I drift toward distant frontiers with no recourse but wandering.
故园无计重归去,
故郷へ戻る術もなく、
No way remains to return to my old home,
斜阳芳草正萋萋。
夕陽に染まる草は一面に生い茂り、
Where under slanted sunlight, lush grasses spread far and wide.
隔水高楼,
水を隔てた高楼では、
From across the water, lofty towers rise,
半夜笙歌,
深夜にも笙や歌が響くというのに、
And deep into the night, flutes and songs echo,
忍听频频翻苦泪。
耐え難く聴くうち、何度ともなく苦い涙がこぼれるばかり。
But hearing them only draws bitter tears again and again.

「少年游(しょうねんゆう)『长安古道马迟迟』」は、北宋の詞人・柳永(りゅう えい)が詠んだ作品とされ、秋の夕暮れを背景にした旅愁と望郷の念を色濃く描き出しています。冒頭の「长安古道马迟迟」は、有名な長安への古道の風景と結びつき、馬のゆるやかな足取りからは、詩人自身の行き場のない思いが象徴されます。盛夏から秋への移ろいを示す「高柳乱蝉嘶」の描写には、物哀しさが漂い、次第に沈む夕陽や冷たく立ち上る煙が、寂寞感をさらに増幅しています。

中盤では「无奈风吹,飘泊天涯计。」という嘆きの言葉によって、作者が抗うことなく漂流を余儀なくされる境遇が示され、故郷へ戻れないもどかしさがいっそう切実に語られます。後半の「斜阳芳草正萋萋。」は、夕陽に染まる芳草が広がる情景の美しさと、故郷に戻れぬ主人公の悲しみを対比させることで、哀愁をより深く印象づける構成となっています。

最後の「隔水高楼,半夜笙歌,忍听频频翻苦泪。」は、水を隔てた先から聞こえてくる宴の笙や歌が、かえって寂しさや涙を誘うという印象的な描写です。賑わう音楽と孤立した自分との対照は、柳永が多くの詞で描き出してきた典型的なモチーフの一つとも言えます。物理的にも心理的にも距離を置かれ、取り残されるような感覚が読者の心に迫り、別離の哀情がより鮮明に浮き彫りになります。

柳永の作品は官僚社会には受け入れられなかったものの、庶民や歌妓の間で深く支持され、その抒情性と表現力は後世の宋詞に多大な影響を与えました。本作もまた、著者特有の繊細な比喩と、官能的とも言える美しい語り口が遺憾なく発揮されており、短い詞の中で壮大な風景と個人的な悲哀を見事に融合させています。

要点

・ゆるやかに歩む馬と蝉の鳴き声が秋の寂寥感を強調
・遠く響く笙歌と自分の孤独な立場とが対照され、哀しみを増幅
・帰りたい故郷へ戻れぬ苦悶が、夕陽に染まる草原の美しさと重なり合う
・柳永の象徴的なモチーフが凝縮され、庶民的人気を支えた繊細な詞風が感じられる
・詩情あふれる自然描写と深い別離の情が融合し、宋詞の魅力を端的に示す

楽しい時は時間が経つのが早いですね!
利用可能な言語