Changgan Song (Part I) - Li Bai
/长干行(其一) - 李白/
Changgan Song (Part I) - Li Bai
/长干行(其一) - 李白/
この詩は、唐代の詩人・李白(りはく)が詠んだ連作『長干行』の中でも特に有名な冒頭部分です。詩の主題は、幼少時代から育まれた二人の愛情と、その甘く切ない記憶。わずか四句という短い構成ながら、読者に初恋の情景や郷愁を鮮明に思い起こさせる力があります。
第一句と第二句では、まだ少女だった「わたし」が門前で花を摘む姿と、髪が額を覆うほどになったばかりという年齢の若さが示されます。これは、中国の古典的な詩の表現において、女性の成長や純粋さを象徴する描写として多用されるものですが、李白の筆致によって、一瞬でその世界に引き込まれるような臨場感が生まれています。
続く第三句・第四句は、「郎(あなた)」が竹馬に乗ってやって来る無邪気さや、青い梅(未熟の梅の実)を弄ぶ遊びの様子を描きます。竹馬や青梅といったモチーフは、子どもらしい純朴さやあどけなさを暗示するもの。詩全体からは、まだ幼い二人が一緒に過ごしたかけがえのない時間と、その思い出への愛しさが伝わってきます。
本作には、戦いや出征などの大きな社会的背景は明確に描かれていませんが、他の連作部分を合わせて読むと、のちに二人が成長してそれぞれの道を進み、離別や郷愁を経て再会を望む姿が示唆されます。李白は豪放な詩風や酒を詠んだ作品でも知られていますが、こうした叙情詩においては非常に繊細な感情を巧みに表現し、読者の胸を打ちます。
『長干行(その一)』は、幼い日の二人の様子を描くことで、誰もが持つ「初恋」や「子ども時代の淡い思い出」を象徴し、読者の心に強いノスタルジアを呼び起こします。短い詩句の中に情景・心理描写・時間の経過の予感が凝縮されている点が大きな魅力です。この作品をきっかけに、当時の社会状況や連作詩全体の流れをさらに学ぶことで、李白の多面的な詩の世界をより深く味わうことができるでしょう。
• 幼い頃に芽生える初々しい情愛がテーマ
• 竹馬や青梅といったモチーフが子どもの無邪気さを象徴
• 短い四句ながら、情景や心情が鮮やかに浮かび上がる
• 李白の詩風の中でも繊細で叙情的な側面を堪能できる作品