[古典名詩] 長干行(その一) - 幼き日の淡い愛情と懐かしさを映す詩の魅力

A traditional Chinese riverside village scene with an elegant woman standing by the riverbank, dressed in ancient Tang dynasty clothing, looking towards the horizon with a distant and wistful expression. The setting sun casts warm golden light over the water, while willow trees sway gently in the breeze. In the background, there are small boats sailing on the river, adding to the serene atmosphere of longing and nostalgia.

长干行(其一) - 李白

長干行(その一) - 李白(りはく)

幼心に芽生える恋と郷愁を描く叙情の一篇

妾髮初覆額,
わたしの髪がようやく額を覆うようになった頃、
My hair just long enough to cover my brow,
折花門前劇。
門の前で花を摘み取りながら遊んでいました。
Plucking flowers at the gate, merrily at play.
郎騎竹馬来,
あなたは竹馬に乗ってやって来て、
You came riding on a bamboo horse,
遶床弄青梅。
床のまわりを回りながら青い梅を手に戯れたものです。
Circling the bed, teasing me with green plums in hand.

この詩は、唐代の詩人・李白(りはく)が詠んだ連作『長干行』の中でも特に有名な冒頭部分です。詩の主題は、幼少時代から育まれた二人の愛情と、その甘く切ない記憶。わずか四句という短い構成ながら、読者に初恋の情景や郷愁を鮮明に思い起こさせる力があります。

第一句と第二句では、まだ少女だった「わたし」が門前で花を摘む姿と、髪が額を覆うほどになったばかりという年齢の若さが示されます。これは、中国の古典的な詩の表現において、女性の成長や純粋さを象徴する描写として多用されるものですが、李白の筆致によって、一瞬でその世界に引き込まれるような臨場感が生まれています。

続く第三句・第四句は、「郎(あなた)」が竹馬に乗ってやって来る無邪気さや、青い梅(未熟の梅の実)を弄ぶ遊びの様子を描きます。竹馬や青梅といったモチーフは、子どもらしい純朴さやあどけなさを暗示するもの。詩全体からは、まだ幼い二人が一緒に過ごしたかけがえのない時間と、その思い出への愛しさが伝わってきます。

本作には、戦いや出征などの大きな社会的背景は明確に描かれていませんが、他の連作部分を合わせて読むと、のちに二人が成長してそれぞれの道を進み、離別や郷愁を経て再会を望む姿が示唆されます。李白は豪放な詩風や酒を詠んだ作品でも知られていますが、こうした叙情詩においては非常に繊細な感情を巧みに表現し、読者の胸を打ちます。

『長干行(その一)』は、幼い日の二人の様子を描くことで、誰もが持つ「初恋」や「子ども時代の淡い思い出」を象徴し、読者の心に強いノスタルジアを呼び起こします。短い詩句の中に情景・心理描写・時間の経過の予感が凝縮されている点が大きな魅力です。この作品をきっかけに、当時の社会状況や連作詩全体の流れをさらに学ぶことで、李白の多面的な詩の世界をより深く味わうことができるでしょう。

要点

• 幼い頃に芽生える初々しい情愛がテーマ
• 竹馬や青梅といったモチーフが子どもの無邪気さを象徴
• 短い四句ながら、情景や心情が鮮やかに浮かび上がる
• 李白の詩風の中でも繊細で叙情的な側面を堪能できる作品

コメント
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    楽しい時は時間が経つのが早いですね!
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