Paradise Lost (Book 1) - John Milton
失楽園(第一巻) - ジョン・ミルトン
Paradise Lost (Book 1) - John Milton
失楽園(第一巻) - ジョン・ミルトン
ジョン・ミルトンの大叙事詩『失楽園』は、全12巻からなる壮大な物語であり、人類の創造や堕落、そして楽園追放に至るまでを、聖書の『創世記』を中心に壮麗に描き上げた作品です。第一巻はその序章として、堕天使サタンが天国から追放され、地獄の湖に横たわる場面から始まります。同時に、冒頭の詩行では人間の「最初の不従順」や罪がもたらした悲惨さ、その中で行われる神の救済計画が宣言され、以降の物語全体を貫くテーマが提示されるのです。
この序章でミルトンは“天のミューズ(霊感)”に語りかけ、古典的な詩の伝統にならって詩の導入部を作っています。しかし、彼が掲げるのは単なる神話的霊感ではなく、あくまでもキリスト教に根差した“聖なる霊感”です。古典文学的要素(ギリシアの英雄叙事)とキリスト教的世界観が融合した独特の筆致が、以降の各巻を通じて展開されます。
詩の一部を読んだだけでも、ミルトン独特の荘厳な文体や緻密なイメージの広がりが伝わってきます。彼は幅広い学識をもとに古典や聖書のイメージを巧みに織り込み、人間の罪と救済、そして自由意志の問題を深く掘り下げます。第一巻では主に地獄に落ちたサタンとその配下たちが自らの軍勢を立て直そうとする場面が中心に描かれ、後のアダムとイヴの物語との対比を際立たせる重要な導入部となっています。
当時のイングランドは清教徒革命期を迎え、政治・宗教的にも激動の時代でした。盲目となったミルトンが失意の中で口述筆記を通じて本作を完成させた経緯は、作者自身が“神から与えられた詩の使命”を全うしようとした証ともいわれます。結果的に『失楽園』は英文学史上のみならず、世界文学においても永遠のクラシックとして位置付けられ、後世の作家や思想家たちに計り知れない影響を与え続けてきました。
• 人類の堕落と救済を壮大に描くキリスト教的叙事詩の序章
• サタンと堕天使たちが地獄へ落とされ、反旗を翻そうとする起点を提示
• 古典的詩形とキリスト教的世界観の融合がもたらす荘厳な文体
• 英文学のみならず世界文学史における不朽の名作として、後世の作家や思想家に多大な影響を与えた