[古典名詩] フランス:オード - この詩の概要

France: An Ode

France: An Ode - Samuel Taylor Coleridge

フランス:オード - サミュエル・テイラー・コールリッジ

揺れる革命への希望と幻滅が交差する魂の叫び

Ye Clouds! that far above me float and pause,
おお、雲よ! はるか頭上にとどまり、たゆたうお前たち、
Whose pathless march no mortal may control!
その道なき行軍は、どのような人間も操れぬもの!
Who, from your mystic urns poured on this earth
いったい誰が、この不思議なる器から地上へ注いだのか、
The vexed and headlong waters, till the sight
荒れ狂う濁流を、見る者の目を
Runs in swift rings of glimmering waves to the eye?
揺らめく波の輪へと追い込み、急かすように?
France—since that morning’s sun, which rose to fling
フランス――あの朝の日差し以来、お前はまばゆい光を放つように昇り、
Fresh splendour through thy bonds, and Freedom’s tone
お前の束縛を新たな輝きのもとにさらし、自由の響きを
Thrilled through thy heart, and through thy streets the shout
その胸に、そして街路の隅々まで震わせた。
Of Liberty was heard—a patriot crowd
自由の叫びが響き渡る中、愛国の民が立ち上がり、
Waved high their swords along the burdened air!
重たい空気を切り裂くように高々と剣を掲げたのだ!
O most belovéd Friend! a glorious crown
おお、いとしき友よ! 栄えある冠を、
Hast thou then gained by freedom—
お前は自由の力によって手に入れたのか――
But the storm
だが嵐が
Comes muttering on, and darker grows the gloom.
低くうなり声を上げ、暗い影を一層濃くしていく。

「France: An Ode(フランス:オード)」は、サミュエル・テイラー・コールリッジがフランス革命への期待と失望を一体に描き出した作品です。革命が理想的な自由と平等をもたらすと信じていたコールリッジは、詩の冒頭で雄大な自然を仰ぎ見つつ、人類が新しい道を切り開く高揚感を示します。しかし、やがて革命が過激化し、恐怖政治へと転じていく過程で、彼の夢見た“解放”が歪められていく現実を痛感せざるを得なくなります。

詩の冒頭で高らかに歌われるのは、フランス革命の躍動感と“自由”という光です。コールリッジは自然の絶対的な力に重ね合わせるように革命を捉え、束縛を打ち砕く一大変革を肯定的に位置づけます。しかし、詩が進むにつれて、革命の陰に潜む暴力や破壊が浮かび上がり、理想と現実の乖離が強調されていきます。彼の中に芽生える疑念や不安は、やがて失望へと結びつき、その心情が“嵐”や“暗い影”といった自然描写として象徴的に表現されるのです。

この作品はロマン派特有の“自然と歴史の融合”を示しつつ、コールリッジ個人の政治観と感情の変遷を叙情的に描き出しています。詩の最後に向けては、理想や希望を持ちながらも、急激な変化に傷つき、安易に熱狂へ走る人間の脆さが見えてきます。こうした“光と影”、“希望と落胆”の二面性を正面から描いた点が、この詩の大きな魅力です。

要点

・フランス革命へ寄せた熱狂的な期待と、その過程で生じた失望感を繊細に描写する。
・嵐や暗い影といった自然のイメージが、革命の暴力性や予期せぬ帰結を象徴的に示す。
・コールリッジ自身の政治的理想と感情の振幅が詩に投影されており、ロマン派詩人の“理想と現実の板挟み”を強く感じさせる。

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