This Lime-Tree Bower My Prison - Samuel Taylor Coleridge
ライムの木陰、わが牢獄 - サミュエル・テイラー・コールリッジ
This Lime-Tree Bower My Prison - Samuel Taylor Coleridge
ライムの木陰、わが牢獄 - サミュエル・テイラー・コールリッジ
「This Lime-Tree Bower My Prison(ライムの木陰、わが牢獄)」は、サミュエル・テイラー・コールリッジが1797年に作詩した作品で、友人たちと自然散策に行けなくなった自分の境遇を綴った独白詩です。原因は些細な怪我や事情で、コールリッジは屋外で楽しく歩き回る仲間を見送り、ライムの木の下に留まることを余儀なくされます。
しかし詩は、初めこそ“この木陰がまるで牢獄のようだ”と嘆く内容ではじまるものの、想像力と共感によって自らの状況を肯定的に変化させていく過程を描き出します。友が目にしているであろう絶景を想像し、その喜びを自分のものとして共鳴し始めるうちに、自然が持つ万能の癒やしや美しさを再発見するのです。さらに、狭い空間の中でも、自然に向き合う姿勢さえあれば十分に感受性を満たしてくれる――というロマン派的な思想にたどり着きます。
この詩には、同時代の詩人・学者でもあった友人たち(例えばチャールズ・ラムなど)が登場人物として想定されており、“孤独”と“共感”を二つの軸として詩が進行していきます。コールリッジは、“遠く離れていても、心を通わせていれば自然の豊かさを共有できる”と考え、“思い描く力”こそが人間に喜びをもたらすと説くわけです。
狭く閉ざされた空間を“牢獄”と嘆くところから始まりながらも、最後には自然との結びつきによって心が広く解放される様子が、作品のテーマそのものを象徴していると言えます。ロマン派を代表する詩人コールリッジらしく、実際の行動が制限されても、想像力次第で精神的自由を得られるという肯定的な結論に至る点が、この詩の魅力でありメッセージとなっています。
・屋外散策を断念せざるを得なかった詩人が、仲間との共感や自然への想像力を通じて心の自由を取り戻す過程を描く。
・“この狭い場所がわが牢獄”という冒頭の嘆きから、最後には自然が持つ普遍の力を再確認するロマン派の典型的転換を示唆。
・友の喜びを我が喜びとして共感する姿勢が、自らの感受性を広げ、制限された環境を肯定的に捉え直すヒントとなっている。