A Lament - Percy Bysshe Shelley
哀歌 - パーシー・ビッシュ・シェリー
A Lament - Percy Bysshe Shelley
哀歌 - パーシー・ビッシュ・シェリー
「嘆き(A Lament)」は、19世紀イギリスのロマン派詩人パーシー・ビッシュ・シェリー(Percy Bysshe Shelley)によって書かれた短い抒情詩です。この詩は、時間の経過、喪失、そして過ぎ去った喜びに対する深い哀しみを表現しています。シェリーは人生や自然の美しさが永遠に続くものではないという事実に直面し、その喪失感を力強く描写しています。
O World! O Life! O Time!
詩は壮大な呼びかけから始まります。「世界」「人生」「時間」という三つの大きな概念が、まるで人格化された存在のように呼びかけられています。これは、詩人がこれらに対し深く問いかける姿勢を示しており、それらの無情さや残酷さへの感情を引き立てています。
On whose last steps I climb,
ここでは、「最後の階段を登る」という比喩的な表現が使われています。これは詩人が人生の終わりに近づいていることを暗示しており、過去を振り返りながらも現在の不安定な立場にある心境を表しています。
Trembling at that where I had stood before;
かつて自分が立っていた場所に対して「震える」というのは、過去の栄光や安定していた時期を思い出しながら、それがもう二度と戻らないことに恐怖を感じている様子を描写しています。
When will return the glory of your prime?
ここで詩人は、「黄金期」が再び訪れることを期待しているように見えますが、次の行でそれが不可能であることを自覚します。
No more—Oh, never more!
この繰り返されるフレーズは、喪失感と諦めの感情を強調しています。「もう二度とない」という認識が詩全体を通じて響き渡ります。
Out of the day and night
「昼と夜」から何かが消え去ったという表現は、日常や自然のサイクルの中で感じていた喜びが失われたことを意味しています。
A joy has taken flight:
「喜びが飛び去った」という比喩は、具体的な出来事ではなく、抽象的な幸福感や満足感が取り戻せなくなった状態を示しています。
Fresh spring, and summer, and winter hoar
四季の移ろいを象徴する春、夏、冬が列挙されています。特に「hoar(霜で白くなった)」という形容詞が冬を描写することで、時間が過ぎ去り老いることの冷たさや厳しさを伝えています。
Move my faint heart with grief, but with delight No more—Oh, never more!
四季の変化が詩人の心を動かすものの、それは悲しみだけであり、かつてあったような喜びや感動はもう感じられないと結論づけています。この最後の繰り返しは、詩全体のテーマである「喪失」と「回復不能性」を明確に打ち出しています。
シェリーの「嘆き」は、シンプルな言葉で深い感情を伝える力強い作品です。時間の経過や喪失に対する普遍的なテーマを取り上げており、読者に自身の人生における一瞬一瞬の大切さを考えさせます。また、詩中のリズムや反復的な表現は、感情の重みをさらに増幅させ、聴覚的にも印象深い作品となっています。
この詩は、愛するものを失ったことによる心の痛みや嘆き、そして人生における儚さや無常観を描いており、読者に感情の癒しや共感を与えます。また、自然や時間に対する人間の無力さを感じさせながら、それでもなお残る希望や記憶の大切さを教えてくれます。