[古典名詩] 失楽園(第四巻) - 詩の概要

Paradise Lost (Book 4)

Paradise Lost (Book 4) - John Milton

失楽園(第四巻) - ジョン・ミルトン

楽園に足を踏み入れたサタンと、無垢なアダムとイヴの対比が鮮やかに描かれる巻

O for that warning voice, which he who saw
ああ、その警告の声があればよいのに。あの、かつて神の幻を見た者が
Th’ Apocalypse, heard cry in Heaven aloud,
天啓の書を啓示され、天上に響き渡る叫びを聞いたあの声が
Then when the Dragon, put to second rout,
あの竜が二度目の退却を強いられるときに発せられた、その声があれば
Came furious down to be reveng’d on men,
人間に復讐しようと憤怒に燃えて地上に降り立つとき
Woe to the inhabitants on Earth! that now,
地上の住人たちに災いあれ!――まさにいま、
While time was, our first parents had been warn’d
時を戻せるならば、私たちの初祖たち(アダムとイヴ)には警告が与えられただろうに
The coming of their secret foe, and scap’d
忍び寄る敵の到来を察知し、避けるすべがあったものを
Haply so scap’d his mortal snare; for now
その死の罠をまぬがれていたかもしれないのに、今となっては
Satan, involv’d in rising Mist, then sought
サタンが立ちこめる霧のなかに紛れ込み、ついに楽園を探し当ててしまった
Where to lie hid; Sea he had searcht and Land
彼は海や陸をくまなく探し、
From Eden over Pontus, and the Pool
エデンの周辺からポントス海、そして沼地に至るまで
Maeotis, up beyond the river Ob;
メオティス湖からオビ川の上流まで踏破し、ついに到達したのだ
... (excerpt) ...

ジョン・ミルトンの『失楽園』第四巻では、いよいよサタンがエデンの園(楽園)に足を踏み入れ、アダムとイヴとの直接的な対比が明確になっていきます。前の巻までに、サタンは神への復讐心を燃やしながら地獄を脱し、人間界を探し求める旅を続けてきましたが、この第四巻でついに“無垢な楽園”を探し当てることに成功するのです。

一方、読者は初めてアダムとイヴの日常生活に触れます。そこでは二人が、自然や動物たちと調和を保ちながら、まだ罪を知らない平和な生活を送っている姿が非常に美しく描かれます。ミルトンは、彼らの愛情や礼拝が神の意志に完全に合致している様子を、叙情豊かに表現し、“人間本来の姿”がいかに神聖であるかを強調します。

しかし、サタンが遠くから彼らの姿を覗き見る場面において、その純粋さや平和がサタンの内面に矛盾した感情を引き起こす――すなわち、一瞬自分の過ちを後悔するものの、すぐに再び反逆の意志を強めてしまう――という複雑な心理が克明に描かれます。これにより、サタンが単なる“絶対悪”ではなく、高い地位から堕とされた悲劇性を帯びた存在であることが強く際立つのです。

さらに、神が送り出した天使ウリエルやガブリエルらによって、サタンの侵入は監視されつつあり、緊張感が高まっていきます。この巻の終盤では、サタンがガブリエルによって楽園から一度追放される描写も挟まれ、物語はいよいよ“人間の堕落”に向けて本格的に動き出すのです。このように第四巻は、楽園の美しさとサタンの策略が初めて交差する重要な転機となっており、“純粋なる愛と悪意”の対比を強烈に印象づける巻となっています。

要点

• サタンがついに楽園(エデン)を見つけ、アダムとイヴの無垢な生活と対比される
• アダムとイヴの神聖な愛や調和が詳細に描かれ、“人間本来の姿”が光を放つ
• サタンの内面では一瞬の後悔と再び燃え上がる反逆心とが交錯し、複雑な悪役像を際立たせる
• ガブリエルをはじめとする天使たちによる監視とサタンの追放が描かれ、物語はいよいよ人間の堕落への伏線を強める

楽しい時は時間が経つのが早いですね!
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