Asking Liu Nineteen - Bai Juyi
/问刘十九 - 白居易/
Asking Liu Nineteen - Bai Juyi
/问刘十九 - 白居易/
この詩は、白居易が友人である劉十九(りゅうじゅうきゅう)を夕べに招いて新醅(しんぱい:できたての酒)を勧めようとする、親密で気さくな心情を描いた小品です。非常に短く簡潔な詩ですが、その中に“季節感”“酒の香り”“友情の温もり”といった多様な要素が凝縮されています。
「綠蟻新醅酒」は、新しい醸造酒の表面に浮かぶ泡が緑の小さな蟻のように見えることからそう呼ばれます。これは酒ができたてであることの証拠として昔から詩文で好んで表現されるイメージです。その酒を「紅泥小火爐」で温めるという描写には、冬の冷えた空気の中で体をほっと和ませる情景が思い浮かぶでしょう。
続く「晚來天欲雪」は、これから雪になるかもしれない寒々しい夕刻を提示しています。しかし作者は、その寒さをむしろ酒を酌む格好の機会と捉えて、「能飲一杯無?」と友人を誘うのです。寒いからこそ、温かい酒と語らいの場を求める情景が、わずか四句の中で鮮やかに際立ちます。
白居易の詩の特徴の一つとして、専門的な典故や難解な言葉を避け、平易な表現で情景や心情を伝えるという点が挙げられます。本作でも、舞台背景はごく家庭的であり、酒と炉というシンプルなモチーフを軸にしながらも、読者はそこに冬の旅情や人間味をじんわりと感じることができます。
また、相手に対して命令口調ではなく、「能飲一杯無?」という問いかけの形をとることで、友と語らいを求める謙虚で温かな気持ちが伝わってくるのも大きな魅力です。儀式めいた厳粛さはなく、仲間同士が気軽に集まって杯を交わす素朴な楽しさが詩全体に滲んでいます。
寒い夕べにこそ飲む温かい新醅の酒。その風情と友情への誘いが、一読するだけで鮮やかに浮かび上がるこの詩は、白居易の“人を和ませる詩情”が如何なく発揮された名作です。
・「綠蟻新醅酒」という新鮮な酒のイメージ
・冬の寒さをかえって酒宴のきっかけとする発想
・友人への問いかけに滲む親密で飾らぬ気持ち
・平易な言葉選びによる短詩ながら豊かな情景描写
・白居易の詩風としての、身近な生活感と季節感の融合