Crossing the Bar - Alfred, Lord Tennyson
舟を漕ぎ越えて - アルフレッド・ロード・テニソン
Crossing the Bar - Alfred, Lord Tennyson
舟を漕ぎ越えて - アルフレッド・ロード・テニソン
『Crossing the Bar』は、イギリスの詩人アルフレッド・ロード・テニソン(Alfred, Lord Tennyson)によって書かれた短い詩です。この詩は、彼が晩年に近づいた頃に作られ、死と永遠の命への旅立ちを象徴的に表現しています。「砂洲(バー)を超える」というタイトル自体が、人生から死へ、そしてさらにその先の未知なる領域へ向かう旅を暗示しています。
この詩は4つの小節で構成され、各小節には異なるイメージや感情が込められています。以下に、それぞれの小節について詳しく説明します。
Sunset and evening star, And one clear call for me!
詩は「夕焼け」と「夜の星」から始まります。これらは人生の終わり、つまり老齢や死を象徴しています。「one clear call for me!」というフレーズは、神からの呼びかけや魂の帰還を意味しており、詩人が自分の人生の終わりを受け入れる準備ができていることを示唆しています。
And may there be no moaning of the bar, When I put out to sea,
ここでの「bar」は砂洲を指し、船が出航する際に波が砂洲にぶつかって音を立てる様子を表します。しかし、「no moaning of the bar」という願いは、詩人の死が穏やかでありたいという希望を示しています。海に出ること(put out to sea)は死後の世界へ向かう旅立ちを象徴しています。
But such a tide as moving seems asleep, Too full for sound and foam,
この部分では、静かで穏やかな潮が描かれています。動きがあるにもかかわらず、まるで眠っているかのようなこの潮は、詩人の死が平穏であることを望む気持ちを反映しています。「sound and foam」がないということは、騒ぎや混乱がないことを意味しています。
When that which drew from out the boundless deep Turns again home.
「boundless deep」は無限の深淵、つまり宇宙や神の領域を指しています。そして、「Turns again home」は魂が本来の故郷に戻ることを表しています。これは詩人が死後、魂が再び神のもとへ戻ることを信じていることを示しています。
Twilight and evening bell, And after that the dark!
「黄昏(twilight)」と「鐘の音(evening bell)」は、一日の終わり、すなわち人生の終焉を象徴しています。その後訪れる「dark」は死後の未知の世界を指しています。
And may there be no sadness of farewell, When I embark;
「farewell」の悲しみがないようにという願いは、詩人が別れの瞬間においても悲嘆に暮れることなく、安らかに次の世界へ移行したいという希望を表しています。「embark」は船に乗ること、つまり新たな旅立ちを意味しています。
For tho' from out our bourne of Time and Place The flood may bear me far,
「bourne of Time and Place」は私たちが生きる時間と空間の境界を指しています。そして「flood」は詩人を遠くまで運ぶ力、つまり死を象徴しています。この部分では、詩人が現世から別の次元へ移動することを描写しています。
I hope to see my Pilot face to face When I have crost the bar.
最後の行では、「Pilot」が神を指していると考えられます。「face to face」という表現は、詩人が死後に直接神と対面することを期待していることを示しています。「crost the bar」は砂洲を超え、人生から死後の世界へ移行することを意味しています。
この詩の中心的なテーマは、死に対する受容と希望です。テニソンは死を恐れることなく、むしろそれを新しい冒険や旅立ちとして捉えています。また、詩を通じて彼は死が単なる終わりではなく、魂が神のもとへ帰るための通過点であると信じていることが伝わります。
特に「砂洲を超える」という比喩は、困難や障害を乗り越えて新たな境地に至ることを象徴しています。この詩は読者に、死を恐れず、むしろそれを受け入れる姿勢を持つことの大切さを教えてくれます。
『Crossing the Bar』は、シンプルながらも深い意味を持つ詩です。それは死の瞬間における静けさと美しさを描き出し、読者に人生の終わりに対する新たな視点を与えてくれます。テニソンの言葉は、死を恐怖としてではなく、魂の旅立ちとして受け入れることの重要性を訴えかけています。
この詩は、人生の終わりと死後の世界への旅を、潮の満ち引きや砂浜を越える船出に例え、静けさと受容の精神で語りかけています。テニソンが晩年に書いたこの作品では、恐れることなく自然の流れに身を任せる重要性が強調されており、読者に深い慰めと希望を与えます。