登柳州城楼寄漳汀封连四州 - 柳宗元
登柳州城楼寄漳汀封連四州(とうりゅうしゅうじょうろう にのぼり しょうてい ほうれん ししゅうに よす) - 柳宗元(りゅうそうげん)
登柳州城楼寄漳汀封连四州 - 柳宗元
登柳州城楼寄漳汀封連四州(とうりゅうしゅうじょうろう にのぼり しょうてい ほうれん ししゅうに よす) - 柳宗元(りゅうそうげん)
この詩は柳宗元(りゅうそうげん)が左遷先の柳州に赴任していた頃、城楼に登って遠くの地に思いを馳せながら、漳(しょう)・汀(てい)・封(ほう)・連(れん)の四州にいる友人や旧知の人々へ宛てた作品とされています。全八句から成る五言律詩で、開巻から広大な視野と憂愁が漂う壮大な情景が展開されます。
はじめの二句「城上高楼接大荒,海天愁思正茫茫」では、城郭の高楼の眼下に広がる荒野や、はるか先の海と空が一体となった景観を指し示し、作者の胸中に広がる茫漠とした思いを一挙に提示しています。官職上の挫折から地方に流された柳宗元にとって、その荒遠の地は心の寂しさや故国への思いを増幅させる舞台だったのでしょう。
続く三句目と四句目では、驛(えき)のほとりで梅の蕾が寒さにほころび始め、川辺の柳は暖気を待ちわびるなど、冬から春へ向かう気配が繊細に描かれます。厳しい寒さの中にも、新しい季節や希望が微かに感じられる点が印象的です。一方で、五・六句目では、北方の関山に響く軍鼓や、西方遠征の馬車や急報の慌ただしさが示され、国境の荒事や戦乱の気配を感じ取ることができます。
七句目「九阍对此心犹壮」は、宮廷のある都を指す「九阍(きゅうこん)」、つまり王城の様子を思い浮かべながらも、まだ自分の志は衰えていないと歌っています。これは左遷による政治的挫折にもかかわらず、詩人として、そして官人としての誇りや忠誠心が依然として健在であることを示していると言えるでしょう。最終句「百战何由报主恩」は、幾度の戦いを経たところで、果たしてどうやって主君への恩義を返せるのかと自問する形を取り、作品を余韻の残る形で締めくくっています。
全体としては、大自然の雄大な風景と国家・政治への熱い思いが融合した、柳宗元特有の壮麗さと叙情が感じられる詩です。遠く離れた旧友や故郷への思い、さらには官人として自分を必要とするはずの国政へかかわる道が断たれかけている無念さなど、作者の内面が重層的に投影されています。また、梅や柳といった季節のモチーフによって厳冬からの新生が暗示されるため、暗い心境を押し流すような希望や再生の機運もかすかに感じられ、読む者に強い印象を与えます。
柳宗元は、都から遠く離れた地で自然と対峙しながら、政治的な痛みや理想を詩に託すことが多かった詩人です。この「登柳州城楼寄漳汀封連四州」も、その典型的な一例と言えるでしょう。大きな視野と高い志とが溶け合う中で、友や故郷、そして国家への深い思いを見事に描き切った名篇として、唐代詩歌の魅力を今に伝え続けています。
・壮大な山川の景色を背景に、左遷の悔しさと望郷の思いが交差する
・寒さの中に春の兆しを織り交ぜ、厳しさと希望が同居する世界観を表現
・宮廷を思い出しながら衰えない志と、恩義をどう返すかという苦悩が作品を深める
・柳宗元特有の自然描写と政治的背景が織りなす重層的な叙情の魅力