[古典名詩] 再授连州至满州隔岭赠同院诸公 - 詩の概要

Reappointed to Lianzhou and Onward to Manzhou Across the Ridge, Presented to My Colleagues

再授连州至满州隔岭赠同院诸公 - 刘禹锡

再授连州至满州隔岭赠同院诸公 - 劉禹錫(りゅう うしゃく)

山河を越え友誼をつなぐ叙情の書

霜风千里递征衣,
霜を帯びた風が千里を渡り、旅衣を運ぶ。
A frost-laden wind spans a thousand miles, delivering the garments of a traveler.
岭外晴云隔故扉。
山の向こうの晴れわたる雲は、故郷の門を遮るかのよう。
Beyond the ridges, bright clouds seem to veil the distant home’s threshold.
逐客再来连水驿,
流謫の身、再び連州の水驛へ赴き、
Exiled once more, I return to Lianzhou’s watery posts,
同心犹忆满州期。
志を同じくする友らと、満州へ向かわんと誓い合った日々を思い出す。
Yet I recall the pledge to journey on to Manzhou, united in purpose with kindred souls.
客程所系青萝袂,
旅路にまとわりつくのは、青々とした蔦の衣のような心の重み。
On my wandering path, clinging vines weigh upon my sleeves like unspoken burdens.
鸿雁传书白雪时。
白雪が降る頃には雁が手紙を運び、
When white snows fall, wild geese carry letters across the sky,
莫教羁绪空回首,
囚われた思いを空しく後ろに振り返ることなかれ、
Let us not turn back empty-hearted upon fettered longings,
一寸丹心慰所思。
小さな赤き真心が、いずれその想いを慰めるだろう。
For a mere inch of earnest heart shall someday bring solace to all we yearn for.

本作「再授连州至满州隔岭赠同院诸公」は、唐代の詩人・劉禹錫(りゅう うしゃく)が、再び(“再授”)連州の官職に就く際、満州へ向かう途中に山脈を越える道中で、同じ院(官職の同僚・学友)として仕える諸公に贈ったと伝えられる詩とされています。連州は現在の広東省北西部、満州は古代・中世においては中国東北部一帯を指す地域名であり、地理的にも政治的にも遠く隔たりのある場所です。そこで生まれる旅情や別離の感慨、あるいは再び地方へ左遷されるような形で赴任せざるを得ない苦渋の思いが、本作の背後に感じられます。

全八句の七言古詩(あるいは律詩的な要素を帯びていると解釈される場合もあります)で構成され、旅と別離が作品の中心的モチーフになっています。まず、「霜风千里递征衣」から「岭外晴云隔故扉」の二句にかけて、旅立ちの寒々しさや故郷との遠隔を示す風景描写が展開されます。唐代において官位を失ったり、左遷された詩人が遠方へ赴く心境は、これまで盛んに詠まれてきたテーマの一つでもあり、劉禹錫自身も数多くの左遷・転任を経験したため、一層リアリティをもって表現していると言えるでしょう。

「逐客再来连水驿,同心犹忆满州期。」では、“逐客”(追いやられた客)という言葉が作者自身の境遇を反映しており、連州の水辺にある驛(宿駅)に再びやって来た心情が直截的に詠まれています。さらに「满州へ向かう約束」を同僚たちと交わしたことが回想され、政治的な事情や地理的な困難を越えて果たしたい理想や志が伺える点が特徴です。

後半では、旅路の重苦しさを“青萝袂”(青い蔦の衣)になぞらえ、疲弊感や孤独感をやや幻想的に示唆します。続く「鸿雁伝书白雪时。」では、雪の季節に鴻雁が書簡を運ぶという古典的モチーフが登場し、人と人とを結ぶ連絡手段が限られていた当時の辛さと、季節の厳しさが重ね合わされます。これらを踏まえたうえで、「莫教羁绪空回首,一寸丹心慰所思。」と結ぶのは、過去を振り返り悔やむだけではなく、一片の誠意を持って現状を生き抜こうとする作者の前向きな姿勢を示すものでしょう。

劉禹錫は、生涯にわたって官職の変動や左遷といった政争の荒波に翻弄されながらも、詩作を通して自らの気概や志を折ることなく持ち続けた詩人として知られています。本作でも、地理的な遠隔地に赴く苦悶が率直に描かれる一方で、最後には何とかして理想を失わずに前を向き、苦難を乗り越えていく意志が見て取れるのです。これこそが、読む者を強く引きつける劉禹錫の魅力であり、同時代の読者や後世の文学愛好者からも共感を得るゆえんとも言えます。

長らく左遷先を転々としながらも、各地の自然や人々の生活を詩の素材にして数々の作品を残した彼の姿勢には、いかなる逆境にあっても創造性や希望を見いだす精神を感じ取ることができます。“再授连州”という不本意な命令が下ったにせよ、遠く満州へ赴く約束を同僚と交わした過去を思い出しつつ、志を同じくする仲間たちへの思いを込めて贈る――そうした劉禹錫の真情や、人間関係への厚い信頼が本詩には凝縮されているのです。わずか八句の中に散りばめられたイメージや情感は、地理的空間の広がりと自己の内面世界とを同時に描き出しており、唐代詩の奥深い魅力を象徴する一篇として後世にも読み継がれています。

以上のように、本作は“左遷”や“辺境”“離別”といった唐代詩の典型的主題を含みながらも、“再び連州へ”という繰り返しの境遇に特有のやるせなさや、仲間との絆がもたらす一筋の光を端的に映し出す点が味わい深い作品です。旅程の厳しさと人間関係の温かさとが混在する情景は、時空を超えた普遍的な感動を読者にもたらすでしょう。

要点

・再び連州へ赴任する苦悩の中にあっても仲間と志を共有する前向きな姿勢
・地理的・政治的に隔たれた場所への旅を描き、左遷や孤独感をリアルに伝える
・鴻雁や青い蔦など古典的モチーフを使い、季節感と切迫感を融合
・劉禹錫の波乱に富む官僚人生が作品に深みを与え、読者を強く惹きつける
・短い詩句でありながら、友情・志・苦境など多面的なテーマが凝縮されている

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