[古典名詩] 復楽園(第一巻) - 詩の概要

A dramatic desert landscape with a lone figure standing tall against the vast horizon, surrounded by dark, shadowy figures symbolizing temptation. The scene should capture both struggle and divine light breaking through ominous clouds above.

Paradise Regain'd (Book 1) - John Milton

復楽園(第一巻) - ジョン・ミルトン

キリストの受難と勝利の序章として描かれる荘厳な書

I who erewhile the happy Garden sungBy one man's disobedience lost, now singRecover'd Paradise to all mankind,
かつて一人の人間の不従順によって失われた幸福なる楽園を歌いし私が、いまここで、人類にもたらされた“取り戻された楽園”を歌わんとする。
By one man's firm obedience fully tri'dThrough all temptation, and the Tempter foil'd
一人の人が、あらゆる誘惑を通して揺るぎない従順を貫き、誘惑者(悪魔)を退けたことでそれは成就したのだ。
(excerpt)
(抜粋)

『復楽園(Paradise Regain’d)』は、ミルトンが『失楽園』の続篇として著した四巻構成の長編詩です。前作がアダムとイヴの堕落と楽園追放を描いたのに対し、『復楽園』では新約聖書における“キリストの荒野の誘惑”を中心に据え、人類の罪がいかに贖われるかを問い直しています。第一巻では、その序章としてキリストが公の場で洗礼を受け、荒野に導かれる経緯や、神の意志を遂行するための決意が強調されます。

冒頭で詩人(語り手)は、かつて“失われた楽園”を歌った自身が、今度は“取り戻された楽園”を歌わんとする姿勢を示します。これにより、“一人の不従順で人間が失ったものを、一人の従順によって取り戻す”という構図が冒頭から明示されます。ミルトンはキリストを“第二のアダム”として位置づけることで、前作『失楽園』との緊密な対比を続篇の冒頭から提示しているのです。

第一巻では、ヨルダン川で洗礼を受けたキリストが“荒野”へ赴き、サタンがその弱みに付け入ろうと暗躍する様子が断片的に示唆されます。ミルトンは、このキリストの静かな信念とサタンの巧妙な狡猾さを対比する形で、新たな叙事詩のプロットを築いていきます。内容は前作ほど大掛かりな戦闘シーンはないものの、キリストの揺るぎない信仰と、“荒野”を舞台にした内面的な対決が、本作に独特の緊張感と神学的深みを与えています。

要点

• 『失楽園』の続篇として、キリストの“荒野の誘惑”を中心に描かれる叙事詩
• 第一巻はヨルダン川での洗礼から荒野へ赴くキリストの導入部分が焦点
• “一人の従順”によって“堕落の償い”が果たされるという、前作との対比が鮮明
• 大規模な戦いよりも“信仰と誘惑”の内面対決が中心となり、神学的思想がさらに強調される構成

コメント
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