[古典名詩] 復楽園(第二巻) - 詩の概要

Paradise Regain'd (Book 2)

Paradise Regain'd (Book 2) - John Milton

復楽園(第二巻) - ジョン・ミルトン

荒野における悪魔の試みが深まる、信仰の強靭さを映し出す巻

Meanwhile the Son of God, who yet some daysLodg'd in Bethabara where John baptiz'd,
そのころ神の御子(キリスト)は、まだ幾日かを洗礼者ヨハネが洗礼を施すベタバラに留まっていた。
Musing and much revolving in his breast,How best the mighty work he might begin
彼は内心、深く瞑想し、思いを巡らせていた。いかにして偉大な使命を始めるのが最善かを。
Of Saviour to mankind, and which way firstPublish his Godlike Office now mature,
人類の救い主として、まずはどのように自らの神的な務めを示し、その成熟を世に広めていくべきか。
(excerpt)
(抜粋)

『復楽園(Paradise Regain’d)』の第二巻は、イエス・キリストが洗礼を受けたのち、“荒野での試練”へと身を投じていく中盤の一幕を描きます。第一巻で洗礼を経たキリストが“荒野へ向かう”導入部分が提示されましたが、この第二巻では、キリストが自らの使命を内省しながら、サタンの誘惑にじわじわとさらされる姿が描かれます。

ここで強調されるのは、キリストがまだ“公の場”に出る前の逡巡や、神の子として自覚が高まる中で、人間としての苦悩も併せ持つ二重性です。ミルトンは『失楽園』で描いた“人間の堕落”を踏まえつつ、今度は“一人の従順によって楽園を取り戻す”というテーマを、より内面的な対決(キリストVSサタン)で表現します。

第二巻では、サタンが一足先にキリストを観察し、どのように誘惑を仕掛ければ彼を堕とせるか思案を巡らせる場面がしばしば挿入されます。サタンの思惑とは対照的に、キリストは“派手な奇跡や即効的な解放”に頼らず、飢えや孤独といった人間的な苦境の中でも“神への信頼”を揺るぎなく保っている。この様子が、荒野という厳しい環境によっていっそう際立てられているのです。

物語の緊張感は、まだ大きな衝突には至らないものの、“サタンはどのような誘惑を用いるのか、キリストはどうやってそれを退けるのか”という期待を高める構成となっています。『復楽園』は派手な叙事詩的戦闘よりも、精神的・神学的な駆け引きに焦点を当てており、この第二巻はその核心へ少しずつ踏み込んでいく重要な段階といえるでしょう。

要点

• 荒野にとどまるキリストが“公の活動を始める前の準備”として内省する様子が中心
• サタンはキリストの弱点を探り、巧妙な誘惑を計画し始めるが、キリストの信仰は揺るがない
• “人としての苦悩”と“神の子としての使命”の両側面がキリストに現れ、内面的な葛藤が深まる
• 『失楽園』の続篇として、“ひとりの従順”が人類に楽園を取り戻す道を示すプロセスが着実に進行

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