[古典名詩] 「わたしの心は踊る」 - 虹を見る子どもの心が永遠に続く詩の背景

My Heart Leaps Up

My Heart Leaps Up - William Wordsworth

「わたしの心は踊る」 - ウィリアム・ワーズワース

虹を見上げる喜びが時を超えて続く詩

My heart leaps up when I behold
虹を仰ぎ見るとき、わたしの心は踊る、
A Rainbow in the sky:
空に架かる虹を見上げるときに。
So was it when my life began;
それはわたしの命が始まった頃もそうだったし、
So is it now I am a man;
今、大人になった今もそうだ。
So be it when I shall grow old,
わたしが年老いても、そうありたい、
Or let me die!
そうでなければ、いっそ死を迎えよう!
The Child is father of the Man;
子どもは大人の父である;
And I could wish my days to be
そしてわたしは願う、わたしの日々が、
Bound each to each by natural piety.
自然への敬虔さによって、互いに繋がり合ってあるようにと。

ウィリアム・ワーズワースの「わたしの心は踊る(My Heart Leaps Up)」は、短いながらもロマン主義を象徴する力強い詩です。虹を見て心が高揚するというシンプルな光景を軸に、子ども時代・大人時代・老年期といった人間の時間的変化を一瞬で結び付ける表現が特徴です。詩人は、幼い頃の純粋な感動を人生のあらゆる段階で失わずにいたい、と切実に願います。

注目すべきフレーズに「The Child is father of the Man(子どもは大人の父である)」があります。これは、幼い頃の経験や感受性が大人になった自分を育んでいる、という逆説的かつ印象的な表現です。ワーズワースは、自然への素朴な驚きや喜びを持ち続けることこそが、人間の精神を豊かにする大切な要素だと説きます。

また、最後の行「Bound each to each by natural piety(自然への敬虔さによって互いに繋がり合う)」は、ワーズワースが重んじる自然観を端的に表した言葉です。自然と一体化する感覚や、自然への深い畏敬の念を持つことが、人間同士の絆や人生の意味を高める要因となると説いています。たとえ時が移ろい、年を重ねようとも、虹を見て心が高鳴るような感覚を失わないことが、彼にとっての理想的な生き方なのです。

この詩は、わずか9行の中にワーズワースの詩論や哲学が凝縮されているともいえます。産業革命期に生き、都市化が進むなかで自然との結びつきが薄れゆく社会を背景に、彼は「子ども時代の感動」を大人になっても維持することの意義を説き続けました。この短い一篇からも、子どもが持つ無垢さや自然への敬虔さが、大人になっても人間の魂を支え続けるというロマン主義的思想を強く感じ取ることができるでしょう。

要点

• 虹を見て高鳴る心を、成長の全過程で失いたくないという願い
• 「The Child is father of the Man」という逆説的フレーズが示す、幼少期の純粋さの重要性
• 自然への敬虔な感覚が、人間の生き方や精神に深い意味を与える
• 短い詩にワーズワースのロマン主義的思想が凝縮されており、時代を越えて訴求力を保つ

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