[古典名詩] 破陣楽(露花の倒影) - 詩の要旨と背景

Po Zhen Le (Dew-Flower Reflections)

破阵乐(露花倒影) - 柳永

破陣楽(露花の倒影) - 柳永(りゅうえい)

花露と旅路の哀愁を描き、心の奥底に響く抒情の世界

露花倒影,烟芜蘸碧,
露に濡れた花は影を逆さに映し、煙る草は翠に染まる。
Dew-laden blossoms reflect an inverted image; the misty grasses dip into emerald green.
画舸凌波去。
彩り豊かな小舟が波を越えて進む。
An ornate boat glides across the rippling waves.
窥鉴孤鸾照背,离鸿引、佩声寥阔。
鏡に映る孤独な鳳凰の姿、遥か彼方で鳴く雁の声に、飾りの鈴音はかすかに広がる。
A solitary phoenix glimpses its reflection; from afar, the call of geese echoes with faint chimes of adornments.
云笼约、楚山隐隐,杨柳阴中,凭阑谁诉?
雲はたちこめ、かすかに楚の山を覆う。柳陰に立ち、欄に寄り添うこの嘆きを、誰に語ろう。
Clouds gather, veiling the faint outlines of Chushan. In the willow’s shade, who leans on the railing to share these sorrows?
更拥红裳翠袖,对酒当歌,
さらに紅の衣と翠の袖を身にまとい、酒を前にして歌い交わし、
Now donning crimson robes and emerald sleeves, we face the wine to sing together,
任香风吹散,燕脂粉汗,
香る風に頬紅も汗もかき消され、
Let the fragrant breeze scatter rouge and sweat alike,
莫惜尊前醉倒,且乐起舞。
酒の前で酔いつぶれることを惜しまず、陽気に舞い上がろう。
Do not regret falling drunk before the wine; let us rise and dance with delight.
江南旧恨,凭高目断,
江南に残る昔の恨みを、高台に立っても晴らせぬまま、
Old sorrows of the southern lands linger; from this high vantage, there is no release,
谁见舞雩归路?
舞雩の地から帰る道を、いったい誰が見届けるのだろう。
Who perceives the path home from the Dance Terrace?

この詞は宋代の詞人である柳永による代表的な作品の一つとされ、筆者の抒情性と映像的な言葉遣いが特徴的です。題名の「破陣楽」は詞牌(詩形)を示し、「露花倒影」は自然の情景を巧みに取り入れた副題として存在します。全体を通じ、花や雲、鳥、遠く霞む山などの描写を通して、詩的な世界が鮮やかに広がります。

この詩の冒頭では、露にぬれた花の影が逆さに映る光景と、煙るように立ちこめる草原が描かれ、静寂と美しさが融合した幻想的なイメージをつくり出しています。その後、舟の揺れや鏡に映る孤独な鳳凰、遠く聞こえる雁の声などが繊細に描かれ、旅情や離別感が読者の胸に広がります。さらに、高台から見下ろす景色と、そこで語りきれない恨みや切なさが重なり、詩全体に哀愁の色合いを加えています。

中盤では、華やかな衣装をまとい、酒宴で歓楽を尽くそうとする姿が描かれますが、一方で散っていく香りや落ちる紅に象徴されるように、歓楽が束の間のものであることも暗示しています。詩末には「舞雩」の地からの帰路が見えない状況が示唆され、人生や旅路の不確かさや切なさを浮き彫りにするのです。このように、雄大な自然と華やかな宴、そして底流する寂しさが組み合わさり、柳永独特の感傷的かつ壮麗な境地を生み出しています。

総じて、本作は宋代の文学的情趣と美的感覚を伝える貴重な詞と言えます。華やかさと寂寥感が交錯する世界を通して、人間の儚さと情愛の深さを余韻とともに味わうことができます。

要点

・美しい自然描写を通じて繊細な感情が浮き彫りにされる
・宴や華やかな装いの背後に、はかない時間と切なさが潜む
・遠くの風景に託した思いが、哀愁と余韻を深めている

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