[古典名詩] 原毀 - 才能ゆえに生じる誹謗の本質を読み解く

On Criticism

原毁 - 韩愈

原毀 - 韓愈

誹謗と才能の関係を深く掘り下げた古代の洞察

或問毀何自生?曰:生於才能既過人,聲名又洽於人也。
ある人が「誹謗はどこから生まれるのか」と問う。答えて曰く「それは人より才能が勝り、名声が広く知れ渡ることから生まれる」。
Someone asked, “From where does slander originate?” The answer: “It arises from surpassing others in talent and being widely acclaimed.”
毀者安能生於無能無名之人哉?然能生於人,亦死於人。
誹謗がどうして無能で無名の人から生じようか。とはいえ、人を源として生じるものは、また人によって終わりを迎えるのだ。
How could slander arise from one without talent or repute? Yet what is born from people also finds its end through people.
夫惟其過於人者,欲無毀,得乎?惟能盡性則毀自不能害耳。
人より優れていればこそ、誹謗を受けずにいることは難しい。しかし己の本分を全うすれば、誹謗も害にはならない。
If one surpasses others, can one avoid slander entirely? Yet by fully realizing one’s own nature, slander cannot truly harm.
嗟乎!毀也者,豈吾人所能全免,惟在自安耳。
ああ、誹謗とは、我ら人間が完全に免れることのできるものではない。あるべき姿を守るのみである。
Alas! Slander is not something we mortals can entirely evade. We need only maintain our rightful stance.

「原毀」は、中国唐代の文人・韓愈が著した散文であり、卓越した才能や高い評価を受ける者がいかに誹謗を受けやすいか、その要因や対処法を論じています。題名の「原毀」は文字通り「誹謗を原(たず)ねる」という意味合いが含まれ、悪口や中傷がどのように生まれ、いかにして消えるのかを探求する内容です。韓愈は“才能が人より抜きん出てこそ、名声が広く知れ渡る”がゆえに誹謗が生じると説きます。つまり、人間社会で際立った存在となるほど周囲からの羨望や嫉妬を受け、その結果として誹謗や中傷が避けられないという考え方です。

さらに、韓愈は人から生じる誹謗であれば、また人によってそれが消えゆく可能性があることにも触れています。つまり、誹謗自体が人の心の中に存在し、そこで育まれるのであれば、同様に人の心の変化や理解によって誹謗は弱まっていくという見解です。ここから得られる教訓は、自身の立ち位置と行動を誠実に保ち、周囲の評価に左右され過ぎないことが重要だという点です。卓越した能力を持つ者は、その分だけ波乱を伴うが、それを恐れて能力を抑えてしまうのではなく、むしろ本分を尽くすことこそが誹謗に動じない道であると主張しています。

韓愈自身は唐代における名文家・思想家として高い評価を受ける一方、時には反対派の攻撃や流罪を経験しました。そのような人生経験を踏まえたうえでの「原毀」は、単なる理論ではなく、実際に誹謗を受けた当事者の視点から生まれた説得力のある作品といえます。作品全体を通して、「卓越した才能や地位は称賛と同時に中傷も呼び寄せるが、それを恐れずに誠実に行動することが肝要」というメッセージが繰り返し示されます。誹謗は自らの内面をゆるがすほどの力を本来持っていないこと、逆に自身が揺るぎない態度を保つならば、それはやがて消え去る運命にあることを強調しているのです。

要点

・才能や地位が高ければ高いほど、誹謗にさらされる可能性がある
・悪評は人の心の作用であり、人によって消えうる
・誹謗を恐れず、本分を尽くすことこそが誹謗に影響されないための要
・韓愈自身の経験からくる実践的な洞察が込められている
・自己を誠実に保ち、周囲の評価に左右されすぎない態度が大切

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