[古典名詩] 失楽園(第二巻) - 詩の概要

Paradise Lost (Book 2)

Paradise Lost (Book 2) - John Milton

失楽園(第二巻) - ジョン・ミルトン

地獄に響く策略と決断が描かれる、壮大なる運命の転換点

High on a throne of royal state, which far
遥か高い王座の上に座し、堂々たる威厳を示すその姿、
Outshone the wealth of Ormus and of Ind,
オルムスやインドの富をも凌ぐ輝きを放ち、
Or where the gorgeous East with richest hand
華麗なる東洋が最も潤沢な手で盛り立てるところよりもなお、
Showers on her kings barbaric pearl and gold,
野蛮とも呼ばれる真珠や黄金を王たちに注ぐ、その地にすら勝る威光をもつ
Satan exalted sat, by merit raised
そこでサタンは高く座し、かつての“功績”によって引き上げられた地位を誇示していた
To that bad eminence; and from despair
歪んだ高みに昇り詰め、絶望の淵から
Thus high uplifted beyond hope, aspires
希望を超えて自らを持ち上げ、野望の翼を広げる
Beyond thus high, insatiate to pursue
さらに高みを求め止むことなく突き進む飽くなき欲望をもって

ジョン・ミルトンの大叙事詩『失楽園』の第二巻では、地獄へ墜落したサタンと堕天使たちが今後の方針を協議する場面が大きな主題となっています。第一巻で深い絶望とともに地獄の様子が描かれましたが、第二巻ではサタンが地獄の王座に座し、“今後いかにして神に対抗するか”という具体的な策略が展開されます。堕天使たちはサタンを中心に集まり、それぞれの意見を述べ合い、結果として“新たに創造された世界(人間界)を狙う”計画が固められていくのです。

ここではサタンが巧みなレトリックを駆使して配下の堕天使たちを鼓舞し、次なる行動へ導いていく様が、豪壮な文体で描かれます。特に注目されるのは、サタンがもつ“飽くなき野望”と“強固な意志”です。かつて天国では高い地位にあった彼が、いまや地獄の支配者となりながらも、なお“さらなる高み”を求め続けるという構図は、読者に“神に対するサタンの反逆”が終わる気配のないことを示唆します。

また、本巻では地獄そのものの風景や、地獄の諸地域・魔物たちの描写にも磨きがかかり、ミルトンの想像力と叙事詩の技巧が遺憾なく発揮されています。地獄の議会(パンダモニウム)で行われる堕天使たちの討論は、その多様な性格や思惑が緻密に描き分けられ、後に人間の世界に及ぼされる災いの予兆をはらんでいるのです。

最終的にサタンは、自ら“禁断の新世界”へ向けて旅立つ決意を固めます。これにより、第三巻以降でアダムとイヴのエデン(楽園)を狙うサタンの動向が、物語の中心へと移っていくのです。こうした第二巻の展開は、堕天使たちの結束とサタンの強烈なリーダーシップを強調し、やがて展開される“人間の堕落”への序曲として大きな意味を持っています。

要点

• 地獄に落ちたサタンと堕天使が、今後の神への対抗策を議論する核心的シーン
• サタンは地獄の王座で威厳を見せ、飽くなき野望を燃やす姿がより詳細に描かれる
• 堕天使同士の討議を通じて、天国との戦いを継続する方向性が確立
• “新世界(人類)”への介入計画が定まり、アダムとイヴを標的とする物語展開への橋渡しとなる重要巻

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