自咏 - 陆游
自咏(じえい) - 陸游(りくゆう)
自咏 - 陆游
自咏(じえい) - 陸游(りくゆう)
「自咏(じえい)」は、中国南宋時代の詩人・陸游(りくゆう)が、自身を重ねるように詠んだとされる一篇です。政治的野心や愛国的心情を強く抱きながらも、波乱に富んだ生涯の中で理想を果たせず、晩年には一種の諦観や達観を帯びた心境が顕著にあらわれます。本作では、白髪を迎えた身であっても衰えぬ抱負を語りながら、灯りに照らされた夜の静けさの中で、過ぎ去った功名や功業を空しく振り返ります。
最後の「江湖に帰り、漁や薪採りにいそしむ身となるのもまたよし」というくだりは、中国文学の伝統的な隠逸思想を反映した表現として読めます。儒教的な「仕官の道」と、山や水辺に隠棲して悠々自適に生きる「隠逸の道」のはざまで揺れ動く詩人の姿が、しみじみとした余韻を残します。陸游の愛国詩とは違い、政治的主張を前面に押し出すわけではなく、むしろ諦観と残心を含む静かな筆致で、己の人生を総括している点が特徴です。
・白髪になっても消えない大志と、過ぎ去った功名への痛切な思いが同居
・宵の青い灯りが、覚めやらぬ心と静けさを対比的に演出
・最終的に江湖へ帰る隠逸のモチーフを通じて、壮志と隠遁のはざまで揺れる陸游の姿が浮かび上がる