[古典名詩] 失楽園(第十一巻) - 詩の概要

Paradise Lost (Book 11)

Paradise Lost (Book 11) - John Milton

失楽園(第十一巻) - ジョン・ミルトン

追放を告げられたアダムとイヴが、未来の人類史を垣間見る巻

Thus Adam to himself lamented loudThrough the still Night, not now, as ere man fell,Wholesome, and cool, and mild, but with black AirAccompanied, with damps and dreadful gloom,
それからアダムは自らを責めながら、夜の静寂の中で大きく嘆く。しかし、もはや(人間の堕落前のように)清浄で涼やか、穏やかな夜ではない。暗い空気が漂い、湿気と恐ろしい陰鬱さを伴う世界の中で。
Which to his evil Conscience representedAll things with double terror: On the groundOutstretchd he lay, on the cold ground, and oftCurs'd his Creation, Death as oft accus'dOf tardie execution, since denounc't
彼の悪しき良心(罪の意識)は、あらゆる光景を二重の恐怖とともに映し出す。アダムは冷たい地面に横たわり、創造の時を呪い、さらに死をも呪う――神に“死の裁き”を言い渡されたにもかかわらず、それが遅々として訪れないことを非難するように。
(excerpt)
(抜粋)

『失楽園』第十一巻は、アダムとイヴが楽園(エデン)からの追放を通告され、彼らが現実的に“人間として地上を生きる”未来を見せられる重要な場面が描かれます。前の巻(第十巻)で神の裁きが言い渡され、アダムとイヴは罪を自覚して互いを責め合いましたが、この第十一巻では、その先に訪れる現実と希望が示されるのです。

冒頭では、アダムが自らの罪を嘆き、死がすぐに訪れてくれればどれほど楽かと苦悩します。しかし、神は彼らを即座に滅ぼすのではなく、“未来へ向けての試練”を与える道を選んでいるのです。そこで天使ミカエルが登場し、アダムに“今後の人類史”の一部を幻視として示します。これはアベルとカインの物語やノアの洪水、さらにはメシア(キリスト)による救済の予兆など、聖書の多くのエピソードを踏まえたビジョンとして描かれ、アダムは人類の歴史が罪に満ちる一方で、神の計画による救いも存在することを知るのです。

この天使ミカエルとアダムの対話は、“楽園追放”という厳しい現実を受け入れさせるための“新しい希望”を示すものでもあります。すなわち、地上に下ることになっても、神を信仰し、悔い改めと信頼を続けることで、やがて人類は救済へ至る可能性があるのだというメッセージがここに含まれています。ジョン・ミルトンは、叙事詩のスケールをさらに広げて“人類史”へ目を向けながら、アダムとイヴの個人的苦悩と希望を交錯させることで、物語全体に深い余韻をもたらします。

要点

• アダムとイヴが“楽園追放”を告げられ、地上へ下る運命が確定する
• アダムは神の裁きに絶望を抱くが、天使ミカエルが“人類の未来”を示す幻視を与え、希望の一端を見せる
• 聖書の物語を下敷きに、アベルとカイン、ノアの洪水、メシアの降臨など、広範な歴史が予見される
• “罪に落ちた人間”が地上で生きる試練と、神の救済計画を信頼する姿勢が交錯し、物語はいよいよ最終巻へと向かう

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