Paradise Lost (Book 11) - John Milton
失楽園(第十一巻) - ジョン・ミルトン
Paradise Lost (Book 11) - John Milton
失楽園(第十一巻) - ジョン・ミルトン
『失楽園』第十一巻は、アダムとイヴが楽園(エデン)からの追放を通告され、彼らが現実的に“人間として地上を生きる”未来を見せられる重要な場面が描かれます。前の巻(第十巻)で神の裁きが言い渡され、アダムとイヴは罪を自覚して互いを責め合いましたが、この第十一巻では、その先に訪れる現実と希望が示されるのです。
冒頭では、アダムが自らの罪を嘆き、死がすぐに訪れてくれればどれほど楽かと苦悩します。しかし、神は彼らを即座に滅ぼすのではなく、“未来へ向けての試練”を与える道を選んでいるのです。そこで天使ミカエルが登場し、アダムに“今後の人類史”の一部を幻視として示します。これはアベルとカインの物語やノアの洪水、さらにはメシア(キリスト)による救済の予兆など、聖書の多くのエピソードを踏まえたビジョンとして描かれ、アダムは人類の歴史が罪に満ちる一方で、神の計画による救いも存在することを知るのです。
この天使ミカエルとアダムの対話は、“楽園追放”という厳しい現実を受け入れさせるための“新しい希望”を示すものでもあります。すなわち、地上に下ることになっても、神を信仰し、悔い改めと信頼を続けることで、やがて人類は救済へ至る可能性があるのだというメッセージがここに含まれています。ジョン・ミルトンは、叙事詩のスケールをさらに広げて“人類史”へ目を向けながら、アダムとイヴの個人的苦悩と希望を交錯させることで、物語全体に深い余韻をもたらします。
• アダムとイヴが“楽園追放”を告げられ、地上へ下る運命が確定する
• アダムは神の裁きに絶望を抱くが、天使ミカエルが“人類の未来”を示す幻視を与え、希望の一端を見せる
• 聖書の物語を下敷きに、アベルとカイン、ノアの洪水、メシアの降臨など、広範な歴史が予見される
• “罪に落ちた人間”が地上で生きる試練と、神の救済計画を信頼する姿勢が交錯し、物語はいよいよ最終巻へと向かう