[古典名詩] スペイン修道院の独白 - 憎しみに満ちた修道士の心の奥底にある感情と葛藤

A detailed image showing a medieval Spanish monastery courtyard with an envious monk standing in the shadows, glaring at his cheerful colleague tending to flowers in bright sunlight. The scene should convey tension between light and dark, symbolizing inner conflict.

Soliloquy of the Spanish Cloister - Robert Browning

スペイン修道院の独白 - ロバート・ブラウニング

修道士の内なる怒りと偽善を描いた物語

Gr-r-r—there go, my heart's abhorrence!
グrrrー、行け!私の心の憎悪よ!
Water your damned flower-pots, do!
呪った鉢植えに水をやれ!
If hate killed men, Brother Lawrence,
もし憎しみが人を殺すなら、ローレンス兄弟よ、
God's blood, would not mine kill you!
神の血よ、俺の憎しみはお前を殺さないのか!
What? your myrtle-bush wants trimming?
何?あなたのマートルの木は剪定が必要か?
Oh, that rose has prior claims—
ああ、あのバラには優先権がある―
Needs its leaden vase filled brimming?
その鉛の花瓶を満たす必要があるのか?
Hell dry you up with its flames!
地獄の炎でお前を乾かしてしまえ!
At the meal we sit together;
食事の時に我々は一緒に座る;
Salve tibi! I must hear
サルヴェ・ティビ!私は聞くしかない
Wise talk of the kind of weather,
どんな天気かについての賢い話、
Sort of season, time of year:
どんな季節か、年の時期について:
Not a plenteous cork-crop: scarcely
豊富なコルク収穫ではない:ほとんど
Dare we hope oak-galls, I doubt;
オークの虫こぶを期待するなんて、疑わしい;
What's the Latin name for “parsley“?
「パセリ」のラテン語名は何?
What call the flowering rush?
開花するアシは何と呼ぶ?
Whew! We'll have our platter burnished,
ふう!我々の皿は磨かれ、
Laid with care on our own shelf!
注意深く自分たちの棚に置かれるだろう!
With a fire-new spoon we're furnished,
真新しいスプーンで我々は整えられ、
And a goblet for ourself,
そして我々自身のために一つの杯、
Rinsed like something sacrificial
まるで何か犠牲的なもののように洗い流され
Ere 'tis fit to touch our chaps—
それが我々の唇に触れる前に―
Marked with L. for our initial!
L のイニシャルが刻まれている!
(He-he! There his lily snaps!)
(へへ!彼のユリが折れた!)
Saint, forsooth! While brown Dolores
聖人だなんて!褐色のドロレスが
Squats outside the Convent bank
修道院の外にしゃがみ込み
With Sanchicha, telling stories,
サンチチャと一緒に物語を語り、
Steeping tresses in the tank,
タンクの中で髪を浸し、
Blue-black, lustrous, thick like horsehairs,
青黒く、光沢があり、馬の毛のように厚く、
—Can't I see his dead eye glow,
―彼の死んだ目が輝いているのが見えないのか、
Bright as 'twere a Barbary corsair's?
バルバリー海賊のように明るく?
(That is, if he'd let it show!)
(つまり、彼が見せてくれるなら!)
When he finishes refection,
彼が食事を終えるとき、
Knife and fork he never lays
彼は決してナイフとフォークを
Cross-wise, to my recollection,
十字に置かない、私の記憶では、
As do I, in Jesu's praise.
私がするように、イエスへの賛美として。
I the Trinity illustrate,
私は三位一体を示し、
Drinking watered orange pulp—
薄めたオレンジの果肉を飲みながら―
In three sips the Arian frustrate;
三回の飲み込みでアリウス派を挫き;
While he drains his at one gulp!
彼は一息で飲み干す!
Oh, those melons! if he's able
ああ、あのメロン!もしそれが彼に可能なら
We're to have a feast! so nice!
私たちは宴会をするのだ!素晴らしい!
One goes to the Abbot's table,
一つは修道院長のテーブルへ行き、
All of us get each a slice.
私たち全員がそれぞれ一片を得る。
How go on your flowers? None double?
君の花はどうだ?倍咲きのものは無いか?
Not one fruit-sort can you spy?
一種類の果実も見つけられないのか?
Strange!—And I, too, at such trouble,
奇妙だ!―私もまた、そんな苦労をして、
Keep them close-nipped on the sly!
こっそりとそれらを摘み取っておく!
  • 詩の暗喩や宗教的背景を考慮しつつ、日本語訳でも同じトーンを保つよう努めました。

『スペイン修道院の独白』について

ロバート・ブラウニング(Robert Browning)による詩『スペイン修道院の独白』は、修道士が抱える激しい嫉妬と怒りをユーモラスかつ暗いトーンで描いた作品です。この詩では、一人の修道士が、同僚であるローレンス兄弟への深い憎しみを吐露し、その感情に翻弄される様子が詳細に描写されています。

詩の背景とテーマ

本作は19世紀のヴィクトリア朝時代に書かれたもので、宗教的な偽善や人間の内面にある闇を浮き彫りにしています。主なテーマとしては以下のものが挙げられます:

  • 嫉妬と怒り: 話者である修道士は、ローレンス兄弟に対する激しい嫉妬心から、彼を呪うような言葉を繰り返します。
  • 宗教的偽善: 表面上は敬虔なクリスチャンでありながら、話者の内面には悪意や邪悪な欲望が渦巻いています。
  • 人間の二重性: 外見と内面の矛盾、そしてそれがもたらす精神的な葛藤が描かれています。
詩の内容解説

以下、各節ごとの内容を詳しく見ていきましょう。

第1節:憎しみの爆発

冒頭で話者は「Gr-r-r」という原始的な唸り声とともに、ローレンス兄弟への強い嫌悪感を表現します。「Water your damned flower-pots, do!」という皮肉混じりの言葉は、兄弟の日常的な行動すら許せないほど話者が苛立っていることを示しています。「If hate killed men... would not mine kill you!」という一節は、彼の怒りが物理的な破壊力を伴ったものであるかのように感じられるほど強烈であることを強調しています。

第2節:食事中の会話

ここでは二人が一緒に食事をする場面が描かれています。しかし、ローレンス兄弟が天気や植物に関する平凡な話をしている一方で、話者は内心で不快感を募らせています。「What's the Latin name for 'parsley'?」といった些細な質問さえ、話者にとっては苛立ちの種となるのです。

第3節:儀式的な振る舞い

話者は自身の食器やカトラリーを清め、特別な扱いをしていることを誇らしげに語ります。これに対してローレンス兄弟の姿勢を軽蔑しており、「(He-he! There his lily snaps!)」という皮肉交じりの言葉で兄弟の純粋さを嘲笑っています。

第4節:外界への視線

ここでは修道院の外で物語を語り合う女性たちが登場します。特にドロレスという女性の黒く光沢のある髪が描写されますが、話者はそれを通じてローレンス兄弟の潜在的な欲望を想像し、彼をさらに非難します。

第5節:信仰の実践

食後の礼拝において、話者は自らの行いを神聖視し、三位一体を象徴する飲み方をする自分を正当化します。それに対し、ローレンス兄弟が水を一気に飲む様子を批判し、彼の信仰心の欠如を指摘しています。

第6節:花や果実への執着

話者はローレンス兄弟の育てる植物や果実にも干渉し、秘密裏にそれらを枯らそうとしていることを告白します。これは兄弟の努力を台無しにするための陰湿な行為であり、話者の歪んだ性格が明らかになります。

第7節:地獄への願望

ガラテヤ書の一節を持ち出し、話者はローレンス兄弟を地獄に送ることを夢想します。また、フランスの小説を使って兄弟を堕落させようとする計画まで立てています。

最終節:悪魔との契約

最後に、話者は悪魔に魂を売ることさえ考えますが、同時にその契約に抜け穴を作ることで自分だけが救われることを望んでいます。「Plena gratia Ave, Virgo! Gr-r-r—you swine!」という結びの言葉は、表面的には祈りの形を取りつつも、実際には相変わらず兄弟への憎しみを露わにしたものです。

まとめ

『スペイン修道院の独白』は、表面上は敬虔な修道士でありながら、内面では悪意や嫉妬に満ちた人物像を通じて、人間の二重性や宗教的偽善を鋭く風刺した作品です。ブラウニングは巧みな心理描写によって、読者に深く考えさせる機会を提供しています。

要点

この詩は、表面上は敬虔な修道士が抱える妬みや怒りといった人間的な弱さを浮き彫りにしており、偽善や内面の闇について考えさせられます。読者は、他者への批判が実は自分自身の欠点を映し出している可能性があることに気づかされます。また、冷静さを失った視点から描かれる辛辣な感情表現を通じて、人間の本質的な矛盾を深く理解することができます。

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