Soliloquy of the Spanish Cloister - Robert Browning
スペイン修道院の独白 - ロバート・ブラウニング
Soliloquy of the Spanish Cloister - Robert Browning
スペイン修道院の独白 - ロバート・ブラウニング
ロバート・ブラウニング(Robert Browning)による詩『スペイン修道院の独白』は、修道士が抱える激しい嫉妬と怒りをユーモラスかつ暗いトーンで描いた作品です。この詩では、一人の修道士が、同僚であるローレンス兄弟への深い憎しみを吐露し、その感情に翻弄される様子が詳細に描写されています。
本作は19世紀のヴィクトリア朝時代に書かれたもので、宗教的な偽善や人間の内面にある闇を浮き彫りにしています。主なテーマとしては以下のものが挙げられます:
以下、各節ごとの内容を詳しく見ていきましょう。
冒頭で話者は「Gr-r-r」という原始的な唸り声とともに、ローレンス兄弟への強い嫌悪感を表現します。「Water your damned flower-pots, do!」という皮肉混じりの言葉は、兄弟の日常的な行動すら許せないほど話者が苛立っていることを示しています。「If hate killed men... would not mine kill you!」という一節は、彼の怒りが物理的な破壊力を伴ったものであるかのように感じられるほど強烈であることを強調しています。
ここでは二人が一緒に食事をする場面が描かれています。しかし、ローレンス兄弟が天気や植物に関する平凡な話をしている一方で、話者は内心で不快感を募らせています。「What's the Latin name for 'parsley'?」といった些細な質問さえ、話者にとっては苛立ちの種となるのです。
話者は自身の食器やカトラリーを清め、特別な扱いをしていることを誇らしげに語ります。これに対してローレンス兄弟の姿勢を軽蔑しており、「(He-he! There his lily snaps!)」という皮肉交じりの言葉で兄弟の純粋さを嘲笑っています。
ここでは修道院の外で物語を語り合う女性たちが登場します。特にドロレスという女性の黒く光沢のある髪が描写されますが、話者はそれを通じてローレンス兄弟の潜在的な欲望を想像し、彼をさらに非難します。
食後の礼拝において、話者は自らの行いを神聖視し、三位一体を象徴する飲み方をする自分を正当化します。それに対し、ローレンス兄弟が水を一気に飲む様子を批判し、彼の信仰心の欠如を指摘しています。
話者はローレンス兄弟の育てる植物や果実にも干渉し、秘密裏にそれらを枯らそうとしていることを告白します。これは兄弟の努力を台無しにするための陰湿な行為であり、話者の歪んだ性格が明らかになります。
ガラテヤ書の一節を持ち出し、話者はローレンス兄弟を地獄に送ることを夢想します。また、フランスの小説を使って兄弟を堕落させようとする計画まで立てています。
最後に、話者は悪魔に魂を売ることさえ考えますが、同時にその契約に抜け穴を作ることで自分だけが救われることを望んでいます。「Plena gratia Ave, Virgo! Gr-r-r—you swine!」という結びの言葉は、表面的には祈りの形を取りつつも、実際には相変わらず兄弟への憎しみを露わにしたものです。
『スペイン修道院の独白』は、表面上は敬虔な修道士でありながら、内面では悪意や嫉妬に満ちた人物像を通じて、人間の二重性や宗教的偽善を鋭く風刺した作品です。ブラウニングは巧みな心理描写によって、読者に深く考えさせる機会を提供しています。
この詩は、表面上は敬虔な修道士が抱える妬みや怒りといった人間的な弱さを浮き彫りにしており、偽善や内面の闇について考えさせられます。読者は、他者への批判が実は自分自身の欠点を映し出している可能性があることに気づかされます。また、冷静さを失った視点から描かれる辛辣な感情表現を通じて、人間の本質的な矛盾を深く理解することができます。