[古典名詩] IL PENSEROSO - 詩の概要

Il Penseroso

Il Penseroso - John Milton

Il Penseroso - ジョン・ミルトン

静かに沈む夜と内省の道程を描く詩的な世界

Hence vain deluding Joys,
されば、空虚で欺くような歓びよ、退いてくれ
The brood of Folly without father bred,
愚かさの種から父なきままに生まれた者たちよ
How little you bested,
おまえたちは何の助けにもならない
Or fill the fixed mind with all your toys;
あるいはその玩具めいた戯れで、落ち着きを得た心を満たすことができるものか
Dwell in some idle brain,
どこか怠惰な頭の中に住み着いているがいい
And fancies fond with gaudy shapes possess,
むやみに派手な姿で妄想を満たしながら
As thick and numberless
それは無数に、際限なく湧き上がってきても
As the gay motes that people the Sun Beams,
ちょうど太陽の光が浮遊する塵を映し出すように、きらきらと踊っているだけ

この「Il Penseroso」は、ミルトンが若き日に書いた対照的な二つの詩の一つで、もう一方の「L’Allegro」が“陽気さ”を謳い上げるのに対し、こちらは“沈思”や“静寂”をテーマとしています。冒頭では、“陽気さ”を退け、代わりに内省的な世界へ誘う呼びかけがなされます。そこから闇夜とともに深い思索へ沈みゆく心模様が描かれるのが特徴です。

詩中では、“夜の魅力”や“書斎の静寂”に象徴されるように、外界の喧噪から離れた深遠なる時間が強調され、思索や学び、瞑想に適した雰囲気が巧みに表現されています。古典神話や伝説的イメージ、キリスト教的要素などを織り込みながら、夜の世界を“神秘的で落ち着いた空間”として高く評価するミルトンの価値観が、若々しい言語感覚とともに提示されるのです。

もう一方の陽気な世界を描く「L’Allegro」とは姉妹作の関係にあり、陰陽の両面を人間の気分や生の営みに重ね合わせて捉えようとする、ルネサンス的ヒューマニズムが感じ取れます。人間の感性には“明るく弾む”側面と、“沈みがちな静思”という側面が共存しており、本作は後者を深く掘り下げているわけです。そうした内面的探求を通じて、より高次の美や真理へ近づく姿勢を描いたところに、ミルトンの詩人としての先見性をうかがえます。

要点

• 陽気な「L’Allegro」と対をなす、夜の静寂と内省を讃える詩
• 初期のミルトン作品らしく、古典的イメージと宗教的要素が交錯
• 外界の喧噪を退けて学問や瞑想に没頭する“沈思”の価値を強調
• 陰陽両面の感情を通じて、深い真理や美へ至るルネサンス的ヒューマニズムが反映される

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