[古典名詩] L’ALLEGRO - 詩の概要

L'Allegro

L'Allegro - John Milton

L’Allegro - ジョン・ミルトン

陽気さと自然の活力を謳い上げる詩的散歩

Hence loathed Melancholy,Of Cerberus and blackest Midnight born,
されば忌まわしき憂鬱よ退け、ケルベロスと漆黒の夜の狭間に生まれし者よ。
In Stygian cave forlorn'Mongst horrid shapes, and shrieks, and sights unholy!
恐ろしき姿や悲鳴、不浄なる光景の漂う冥府の洞窟で朽ち果てるがいい。
Find out some uncouth cell,Where brooding Darkness spreads his jealous wings,
妙ちきりんな独房を見つけ、嫉妬深い暗闇がその翼を広げる場所へ行くがいい。
And the night-raven sings;There under ebon shades, and low-brow'd Rocks,
夜鴉が啼き交わすその地の、黒檀の闇と険しい岩陰の下にでも隠れ潜んでいろ。
As ragged as thy Locks,In dark Cimmerian desert ever dwell.
お前の乱れ髪のように荒涼たる、暗きキンメリアの荒野に永遠に佇んでいればよい。
But come thou Goddess fair and free,In Heav'n ycleap'd Euphrosyne,
さあ、麗しく自由なる女神よ来たれ、天上ではエウフロシュネと呼ばれる者よ。
And by Men, heart-easing Mirth,Whom lovely Venus at a birth
人の世では心を解きほぐす陽気と称えられ、あの美しきヴィーナスが産み落とし、
With two sister Graces moreTo Ivy-crowned Bacchus bore:
さらに二柱の美徳の姉妹と共に、蔦冠のバッカスへと贈った存在よ。
(excerpt)
(抜粋)

「L’Allegro(陽気なる者)」は、ジョン・ミルトンが青年期に書いた代表的な田園詩の一つです。同時期に書かれた陰鬱な世界観を描く「Il Penseroso(沈思する者)」と対をなす作品として知られ、こちらは“陽気さ”や“歓喜”をテーマに掲げています。

冒頭で、憂鬱(Melancholy)を追い払うところから詩が始まり、代わりに“陽気さの女神”を招き入れる構成が特徴的です。これにより、陰と陽の対比が鮮明になり、ミルトンが「心を弾ませる活力」「自然や人間にとっての生命力」を詩全体で表現しようとする狙いが見えてきます。詩中には、朝の光や草木の香り、小川のせせらぎ、音楽や踊りなど、自然や田園の喜びにあふれたイメージが散りばめられ、読者はその美しさや活気を追体験するように導かれます。

さらに、古典的・神話的な存在(ギリシャ・ローマの神々)とキリスト教的要素が混在しつつ、当時のルネサンス文学のエッセンスが強く感じられる点も見逃せません。陽気さを象徴する女神(エウフロシュネ)やバッカス(ディオニュソス)、三美神などの存在が詩の彩りを豊かにしており、これらに触れることで読者は“楽しさの根源”を身体感覚と神話的想像力の両面から捉えることができます。

こうした要素を通じて「L’Allegro」は、“喜びに満ちた精神”を謳い上げると同時に、自然への礼賛と芸術(音楽や踊り)の効用をも強調する詩です。これに対して「Il Penseroso」では、静寂や瞑想を通じて内面世界を深く探求する様子が描かれ、読者は二つの作品をあわせ読むことで、ミルトンがいかに多面的な“人間の気分”や“生の味わい”を表現しようとしたかをより深く理解できます。

この詩は、ミルトンの後の大作『失楽園』や『復楽園』とはまた異なる、軽快で田園的、そして若々しい感性が反映された作品です。ルネサンス文学における“牧歌的理想”と“人間の感性”を結び合わせながら、“陽気に生きること”の価値を改めて伝える一篇となっています。

要点

• 憂鬱を追い払い、陽気さ(Mirth)を呼び込む構成で始まる牧歌的詩
• 自然や神話のイメージを散りばめ、活力と喜びに満ちた世界を描写
• 同時期に書かれた「Il Penseroso」と対をなし、陰陽両面の人間的感情を表現
• ミルトンの若々しい感性とルネサンス的世界観が融合し、“人生を楽しむ”価値を鮮やかに伝える

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