[古典名詩] グッド・モロー - 詩の概要

The Good-Morrow

The Good-Morrow - John Donne

グッド・モロー - ジョン・ダン

目覚めと愛の完全性を謳う鮮烈な情景

I wonder, by my troth, what thou and I
誓って言うが、君と僕は一体これまで何をしていたのだろう
Did, till we loved? were we not weaned till then?
愛し合うようになるまで、まるで離乳できていなかったのだろうか?
But sucked on country pleasures, childishly?
田舎のささやかな快楽を、まるで子供のように吸っていたのだろうか?
Or snorted we in the Seven Sleepers' den?
それとも、“七人の眠り聖人”の洞窟の中で眠りこけていたのか?
'Twas so; but this, all pleasures fancies be;
そうだったのだろう。だが、そんな喜びはすべて幻のようなもの、
If ever any beauty I did see,
これまで僕が見て「美しい」と感じたすべてが、
Which I desired, and got, 'twas but a dream of thee.
欲して得たものだとしても、それは君を夢見てのことだったにすぎない。
And now good-morrow to our waking souls,
さあ、いまや目覚める我らの魂に“おはよう”を告げよう、
Which watch not one another out of fear;
互いを警戒して監視するのではなく、
For love all love of other sights controls,
愛によって、ほかのあらゆる光景への執着は支配され、
And makes one little room an everywhere.
小さな部屋を世界のすべてに変えてしまうのだ。
Let sea-discoverers to new worlds have gone,
探検家たちが海を渡って新しい世界を見つけようとも、
Let maps to others, worlds on worlds have shown;
地図が幾重もの世界をほかの人々に示そうとも、
Let us possess one world; each hath one, and is one.
僕たちは一つの世界を持てばいい。お互いがそれぞれ一つの世界であり、そしてその世界自身でもあるのだから。
My face in thine eye, thine in mine appears,
君の瞳には僕の顔が映り、僕の瞳には君の顔が映っている、
And true plain hearts do in the faces rest;
ありのままの心は、お互いの顔を通して安息を得る。
Where can we find two better hemispheres,
これ以上に完璧な“二つの半球”を、どこに見いだせるだろう、
Without sharp north, without declining west?
凍える北も、沈みゆく西もない場所で?
Whatever dies, was not mixed equally;
均等に混ざり合っていないものは、やがて死を迎える、
If our two loves be one, or thou and I
けれど僕たち二人の愛が真に一つであるのなら、あるいは君と僕が、
Love so alike, that none do slacken, none can die.
同じように愛し合うのなら、そこには衰えも死も存在しないはずだ。

ジョン・ダンの『The Good-Morrow』は、いわゆる“目覚めの詩”として多くの読者から愛されてきた作品です。恋人同士が真に愛を自覚した瞬間を“目覚め”にたとえ、それ以前の人生がまるで“眠り”だったかのように描き出します。ダン特有の形而上詩的要素がちりばめられ、身近なものから宇宙的なイメージまでを軽やかにつなぎ、男女の結びつきが世界全体を塗り替えてしまうほどの力を持つことを示唆しています。

冒頭部では「これまで何をしていたのだろう」と問いかけながら、田舎の快楽や“七人の眠り聖人”の伝説を引用し、過去の無自覚な状態を振り返ります。そして恋が始まった今こそが真の覚醒であり、お互いの魂が目を覚まして“恐れ合うことなく見つめ合う”のだと宣言します。

続いて、海を渡る探検家や地図から“世界”を例に挙げる比喩が登場しますが、それすらも二人の部屋という“小宇宙”には及ばないと高らかに歌い上げられます。これは“愛”がもたらす心理的な充足や精神的な高みを象徴しており、外界の広大さが色褪せるほどの強い結びつきを示すものです。

また、終盤では“二つの半球”という印象的な比喩が使われ、男女が互いの欠点や脆さを補完し合いながら完全性を生み出す姿が語られます。厳しい北も沈む西もない理想の半球、つまり欠点や不安が存在しない世界を二人で作り上げるというのです。ここでダンは、愛が対等であり同質的であれば、“衰え”や“死”といった概念すらも超越すると結論づけます。

このように、『The Good-Morrow』は、愛の目覚めを壮大なイメージと結びつけつつ、恋人同士が作る親密な空間を“世界”そのものと捉えるという、ダンの詩的革新が詰まった一篇です。恋というプライベートな体験を“宇宙的次元”へ拡張する想像力は、まさに形而上詩の真骨頂とも言えるでしょう。

要点

• 恋愛による“目覚め”と、それまでの人生を“眠り”として対比
• 部屋という私的空間が“世界”や“宇宙”へと拡張される形而上詩的比喩
• 男女の結びつきが欠けた部分を補い合い、完全性を生むという思想
• ダンの愛の詩の中でも特に人気が高く、深い精神性と豊かなイメージが魅力の作品

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