Mission to the Frontier - Wang Wei
/使至塞上 - 王维/
Mission to the Frontier - Wang Wei
/使至塞上 - 王维/
王維(おうい)の『使至塞上(し し さいじょう)』は、唐代の都である長安(あるいは漢の名を用いて「漢塞」と言及)を離れ、遠く西方の辺境へ派遣された際の情景を詠んだ七言律詩です。詩の冒頭では、一台の車だけを伴い辺境に向かう心細さを示す一方、すぐに広大な砂漠や遠くの空を飛ぶ雁が登場し、大自然と歴史的背景が壮大に融合する構図を形成します。
中盤に登場する「大漠孤煙直,長河落日圓」という二句は、中国詩史上でも屈指の名句として有名です。遮るもののない砂漠の中に立ち昇る一本の孤煙と、悠々と流れる大河に映える落日という対比が、辺境ならではの寂寥感と荘厳さを一挙に視覚化します。
さらに、終盤の「蕭關逢候騎,都護在燕然。」では、前線基地にある騎兵たちの姿と、それを統括する都護の存在が示されます。辺境の地で繰り広げられる軍事・外交上の駆け引きや、過酷な環境のなか国防に従事する将兵の姿は、当時の唐王朝が西域に勢力を伸ばそうとしていた歴史的情勢をまざまざと想起させます。
こうした雄大な自然と現実的な軍事・政治情勢が短い八句に凝縮されており、読む者に強烈な印象を与えます。王維は、官僚・画家・詩人という多彩な側面をあわせ持った人物であり、この詩には「詩中に画あり、画中に詩あり」という評価にふさわしい、鮮やかな情景描写と深い情緒が刻まれているのです。
• 一台の車とともに辺境へ向かう孤独感を冒頭で強調
• 「大漠孤煙直,長河落日圓」の視覚的対比が時代を超えて愛される名句
• 軍事・外交の最前線にある辺境の空気と、唐王朝の西域拡大政策を背景とした歴史性
• 王維の絵画的表現が際立ち、自然美と政治的現実が融合する深い詩情