Holy Sonnet 5 - John Donne
聖なるソネット第5番 - ジョン・ダン
Holy Sonnet 5 - John Donne
聖なるソネット第5番 - ジョン・ダン
ジョン・ダンの「ホーリーソネット第5番」は、自身を“巧みに作られた小さな世界”ととらえながら、そこに巣くう罪や穢れを火と涙によって浄化しようとする宗教的・形而上詩的な作品です。冒頭で語り手は、“四元素”と“天使的なる霊”から成り立つ自らの存在を告白しますが、同時に“黒き罪”によって内部が蝕まれ、“世界”という自身の両面が闇へと落とされる構図を示します。
続く部分では、神を“新たな天体を発見し、新たなる地を記録できる存在”と呼びかけ、涙という海で世界を沈め、または洗い清めるよう懇願します。これは“大航海時代”の発想とも結びつき、ダン特有の比喩—地理的イメージと精神的探求が交錯—を鮮やかに表しています。一方で、ただの水による洗浄ではもはや不可能で、むしろ“火”による完全な焼却が必要だと説かれる場面は、キリスト教的な“浄化”や“聖なる炎”の象徴と強く結びつきます。
後半では“色欲”や“妬み”といった炎が、すでにこの小宇宙を焼き、汚したという反省と同時に、それらとは異質の“信仰の火”による再生の願いが強調されます。ここで“焼く”行為が破壊で終わるのではなく、むしろ“癒し”の契機となる、という逆説的構造が本作の核心です。ダンはキリスト教神学に基づき、罪を焼き尽くすことで魂が真に浄化され、“主”の家へと近づいていくイメージを提示します。
この詩における“世界”という言葉は、単なる外界ではなく、自己そのものを象徴するものとして機能しています。つまりダンは、神と自己の関係を“宇宙の地図”あるいは“小さな世界”という比喩で描くことで、読者に“罪と救済”という主題を身近かつ雄大に感じさせるのです。さらに“火”と“水”という相反する要素をめぐる想像力や、読者を意表を突くような結論へと導く論理の飛躍が、形而上詩ならではの知的魅力を生み出しています。
• 自己を“小さな世界”と捉え、罪による破壊と浄化の必要性を説く
• 地理的イメージと宗教的モチーフが融合し、神との関係性を宇宙規模で示唆
• “火”が破壊と同時に癒やしをもたらすという逆説的構造が核心
• ダン特有の形而上詩的手法が、罪からの救済を深く印象づける一篇