The Undertaking - John Donne
埋もれし誓い (The Undertaking) - ジョン・ダン
The Undertaking - John Donne
埋もれし誓い (The Undertaking) - ジョン・ダン
「The Undertaking(埋もれし誓い)」は、ジョン・ダンの形而上詩の中でも“秘めたる行為”をあえて語らず隠し通すことの価値を歌った作品です。冒頭では「過去の英雄たちが成したことを凌ぐ勇壮な行いを成し遂げた」と語りながら、その“何を成し遂げたか”を明かす代わりに、「その偉業を語らずに秘密にすることこそ、より大きな勇壮だ」としています。ここには、愛や美をめぐる内面的な“真の価値”を軽々しく外界へ晒すべきではない、というダンの思想が反映されていると読めます。
詩中では“specular stone(鏡石)”という比喩を用い、それを加工する技術を教えようとしても肝心の石がなければ無意味だと暗喩します。同様に、愛の本質や真の美も、必要とされる“素材”や“理解”がないところにただ言葉で伝えようとしても、結局は伝わらないという主張がにじみ出ます。軽々しく語られる愛は、深遠な内面をともなわず、かつてと同じ平凡な愛情にとどまってしまう、というわけです。
終盤では、“内なる美”を得た者は外面の飾りに惑わされず、本質的な甘露や“天国の乳”を味わう境地に至ると説きます。これはダンが好んで使う、俗世を越えた霊的な充足感の隠喩です。詩全体を通じて、“語らない愛”の尊さや、“秘めた価値”を知る人間のみが得られる至高の悦びを強調しているのが、この作品の大きな特徴といえるでしょう。
• 愛や偉業の“秘密を明かさない”ことで、真価を保つという逆説をテーマに
• “specular stone”の比喩で、理解や素材がなければ伝わらない深い価値を暗示
• 軽々しく言葉にされる愛ではなく、内面にこそある美を希求するダンの思想
• 形而上詩らしい論理的飛躍と逆説を通じ、読者に“隠された崇高”を考えさせる名作