昌谷集(选一) - 李贺
昌谷集(选一) - 李賀
昌谷集(选一) - 李贺
昌谷集(选一) - 李賀
本作は、李賀(りが)の詩集『昌谷集』の中から選ばれた一首で、後に「秦王飲酒(しんおう いんしゅ)」とも呼ばれて伝わっています。李賀は“詩鬼”と称されるほど、奇抜なイメージや壮麗な幻想世界を大胆に描く詩風で知られますが、本詩にもその特徴が存分に表れています。
冒頭の「秦王騎虎遊八極」は、伝説的・歴史的存在である秦の王が虎にまたがるという大胆な光景から始まり、まるで天地の果てまで我が物顔で巡るかのような豪壮さを示唆します。続く「劍光照空天四塞」は、剣の光が四方の端々にまで及ぶ様子を暗示し、さらに「仙人綠雲亂霜竹」「海動銀床清夜色」と、神仙や海、夜の静寂など、超現実的なイメージが矢継ぎ早に繰り出される展開が際立ちます。こうした華麗かつ幻想的な表現は、李賀ならではの作風といえるでしょう。
後半の「闌干星斗天欲明,玉背笙聲浮動城。」では、星々が夜明けに近い空を飾り、玉の背を持つ笙(しょう)の音色が城内を満たす情景が描かれます。華麗な宮廷の余韻を想起させつつ、その一方で時がすぐに移ろいゆく儚さも感じさせる絶妙な構成です。結句の「白日下山空爛漫,定知歸去無雞鳴。」は、日の沈み行く中での徒然なる美しさと、やがて訪れる静寂を暗示して、壮大な世界観の幕引きを飾ります。
李賀の詩は、一見すると物語的な要素や神話的世界ばかりが目立ちますが、そこには人生の盛衰や孤高の感情、儚い美への憧れなど、人間的な情緒が深く潜んでいます。彼はわずか二十数年の短い生涯で、多くの奇異な作品を遺し、唐代詩歌の中でも特異な地位を確立しました。この「昌谷集」からの一編も、イメージの奔流と同時に、時間の経過や運命の不可逆性を暗示する要素が散りばめられており、読後には独特の哀愁と豪放な余韻が同時に訪れます。
・“秦王”や“虎”といった強烈なイメージが冒頭から視野を奪う
・仙人、海、夜明け前の星など、神話的かつ超現実的モチーフが連鎖
・宮廷的な華やぎと儚さが同居し、時の流れを暗示する構成
・李賀特有の壮麗かつ哀切な世界観が詩句に凝縮
・短命の詩人が放つ圧倒的な想像力と叙情性を堪能できる代表的一篇