[古典名詩] 復楽園(第三巻) - 詩の概要

Paradise Regain'd (Book 3)

Paradise Regain'd (Book 3) - John Milton

復楽園(第三巻) - ジョン・ミルトン

サタンの巧妙な誘惑とキリストの揺るぎない信仰が激突する巻

So spake the Son of God; and Satan stoodA while as mute, confounded what to say,
こうして神の子(キリスト)が語り終えると、サタンはしばし言葉を失って立ち尽くした。何を言うべきか悩むほどに混乱していたのだ。
What to reply confuted, and convincedOf his weak arguing and fallacious drift;
そして彼は自らの論の弱さと狡猾な企みがキリストには通じないと悟り、反論が難しいと感じていた。
(excerpt)
(抜粋)

『復楽園(Paradise Regain’d)』第三巻では、荒野でのキリストとサタンの精神的攻防がいよいよ本格化します。前巻でサタンはキリストに対する誘惑の糸口を探り、キリスト自身は神への信頼を深めていましたが、この第三巻では、サタンが具体的な誘いをもってキリストを揺さぶる場面が増え、より直接的な対話や試練が描写されます。

ここでミルトンは、“物理的な戦闘”ではなく、“論理と信仰”をめぐる会話に焦点を当てます。サタンは豊かな知識や世俗的権力をちらつかせ、キリストの人間的欲望や野心を喚起しようと狙いますが、キリストは飢えや孤独の苦境の中でも“神の言葉”だけを拠り所として動じません。こうした一進一退のやり取りの中で、“人間的弱さ”と“神の恩恵”を対比させるミルトンの手腕が際立ちます。

注目すべきは、サタンがキリストに提示する欲望が段階的にエスカレートしていく点です。単なる肉体的欲求から、名誉や権力、さらには世界的支配へと誘惑のテーマが変化するたびに、キリストはそれを一つ一つ退けていきます。ここには、『失楽園』におけるアダムとイヴの“禁断の木の実”に対抗するかのように、“神への従順こそ人類再生の鍵”であるというミルトンの主張が重ねられているのです。

要点

• キリストとサタンの対決が本格化し、より直接的な誘惑と論争が繰り広げられる
• サタンはさまざまな欲望や権力をちらつかせるが、キリストは“神の言葉”により動じず
• 『失楽園』での“堕落”と対比し、“真の従順”がいかに“楽園回復”を導くのかを浮き彫りに
• 肉体的・精神的困難にさらされながらも、キリストは揺るぎない信仰を示し、最終的な勝利への伏線が高まる

シェア
楽しい時は時間が経つのが早いですね!
利用可能な言語
おすすめ動画
more