Paradise Regain'd (Book 4) - John Milton
復楽園(第四巻) - ジョン・ミルトン
Paradise Regain'd (Book 4) - John Milton
復楽園(第四巻) - ジョン・ミルトン
ジョン・ミルトンの叙事詩『復楽園(Paradise Regain’d)』第四巻は、キリストとサタンの最終的な対決と勝利が描かれるフィナーレの巻です。第一巻から第三巻を通じて、荒野での試練や巧妙な誘惑を重ねてきたサタンは、ここで最後の大技とも言うべき誘惑を仕掛けますが、キリストの信仰と従順がそれを決定的に打ち破る場面がクライマックスとなります。
この巻でミルトンは、サタンが提示する世俗的な権力や富、さらには古代世界における名声の数々を、壮麗なイメージとして列挙しながら“いかに人間の欲望を刺戟するか”を映し出します。しかしキリストは、それらすべてを“神の計画”と“真の救済”に反するものと見なし、毅然と拒絶するのです。この時、キリストはあくまで静かな威厳と信仰の力によって誘惑に打ち勝ち、決してサタンと同じ土俵で争うことをしません。
最終的に、“神の子”は荒野での試練を終え、サタンは決定的に退けられます。これにより、『失楽園』で描かれたアダムとイヴの“堕落”に対して、“人としてのキリスト”が罪を犯さずに誘惑に勝利したという対照がはっきり示されるわけです。“復楽園”というタイトルどおり、“アダムによって失われた楽園をキリストの従順が取り戻した”という図式が完成します。全四巻を通じて華やかな大戦闘ではなく、“内面的な信仰と意思”による静かな勝利が描かれる点が、『失楽園』との鮮やかな対比を際立たせるミルトン独特の叙事詩となっています。
• サタンが最終的な誘惑を仕掛けるも、キリストが断固たる信仰で打ち破るクライマックス
• “世俗の栄華や権力”の華やかなイメージが提示される中、真の価値は“神への忠誠”にあると強調
• 『失楽園』におけるアダムとイヴの堕落を覆す形で、“神の子”の従順が楽園を取り戻す道筋を示す
• 大戦闘や壮麗な神々の衝突ではなく、“精神的対決”による勝利がミルトンの神学的・文学的意図を鮮明にする終幕