Paradise Lost (Book 8) - John Milton
失楽園(第八巻) - ジョン・ミルトン
Paradise Lost (Book 8) - John Milton
失楽園(第八巻) - ジョン・ミルトン
『失楽園』第八巻では、前巻において天使ラファエルが語った“天地創造”の話に続き、アダムが自身の誕生やイヴとの出会い、そして神との対話について詳しく語る場面が中心となります。アダムとラファエルの対話を通じ、ミルトンは“人間がどのように神や世界、そして伴侶と向き合うべきか”という大きなテーマを掘り下げていきます。
冒頭では、ラファエルが地上の営みを見守り、アダムからのさらなる問いに答えるかたちで物語が進行します。アダムは、“自分がどのように目覚め、いかにして神と出会い、そしてイヴと結ばれたか”を振り返り、ラファエルに対してその驚きや感謝を率直に表明します。ここで描かれるアダムの視点は、いまだ罪を知らない人間が持つ無垢な探究心と愛情を象徴するもので、イヴに対する深い愛と尊敬、しかし同時に“どうしても理解しきれない神秘”も含んでいることが示唆されます。
また、アダムは“宇宙の仕組み”にも興味を示し、天体の運行や規模などの疑問をラファエルにぶつけますが、ラファエルはそれらの疑問に対して、“人間の限界”と“神の配慮”を説き、過度に知識を求めることの危うさをほのめかします。これは後に起こる“知識の木の実”をめぐる問題と強く関係しており、読者に“神の定めた範囲の中でいかに学ぶか”という、自由意志と制限の問題を改めて考えさせます。
こうして第八巻は、愛と知識をめぐる人間の在り方が深く議論される巻として位置づけられています。アダムとイヴの“純粋な関係”と、“神や天使との対話”がまだ円滑に保たれている一方で、サタンの陰謀がすでに忍び寄っているという構図が、物語全体の緊張をいっそう高める要因となっています。
• 天使ラファエルとアダムの対話を中心に、アダムの誕生やイヴとの出会いが回想される
• アダムが宇宙の仕組みや神の創造に興味を示すが、天使は“人間の限界と神の配慮”を説く
• イヴへの深い愛と敬意が表現され、罪を知らない人間の純粋さが強調される
• 物語は“知識への欲求”と“神の定め”との葛藤が一層明確になり、次巻以降への伏線が強まる