Green Creek - Wang Wei
/青溪 - 王维/
Green Creek - Wang Wei
/青溪 - 王维/
この詩『青溪』は、唐代の詩人・王維(おうい)が得意とした山水詩のひとつで、青々とした川の流れに身を委ねながら、穏やかに移ろう自然を描き出しています。冒頭の「言入黄花川,每逐青溪水」では、まず黄花川(こうかせん)のほとりへ向かう意図を示しつつ、実際には青い渓流に導かれて奥へと入っていく様子が語られます。山々の曲がりくねった道を何度も曲折しながらも、実際の距離はさほどでもないという対比が、山水世界の不思議さを暗示しているようです。
続く「聲喧亂石中,色靜深松里」によって、瀬音が岩の間でやかましく響きわたる一方、その水面の色は深い松林の陰で静かに落ち着いている情景が浮かび上がります。「漾漾泛菱荇,澄澄映葭葦」では、水面に浮かぶ菱や荇などの水草と、澄んだ水に映る葦の姿が繊細に描かれ、視覚的な美しさと静謐な雰囲気をいっそう際立たせます。
「我心素已閑,清川淡如此」の一句は、作者自身の内面の静寂さを清い川の様子になぞらえたもの。王維は仏教や道教の思想に通じ、官界に身を置きながらも、自然に囲まれた暮らしを理想とし、精神的な余裕や閑適を求め続けました。その姿勢が、この詩の抒情性にも深く投影されています。
最後の「輕舟泛月歸,漸杳春山空。」では、軽やかな舟に乗って月光を頼りに帰路に着く光景が描かれ、やがて春の山々は暮れなずむ闇の中へと飲み込まれていきます。ここには、自然の懐に入り込んではまた去っていく詩人の姿が象徴されており、読み手に「いつか再び訪れたい」という余韻や、はかない人生観がかすかに感じられるのです。
• 黄花川へ向かう旅路が、自然と一体化する流れへと変わる導入
• 流れる水と深い松林との対比で、動と静が巧みに表現
• 仏教や道教の思想を反映し、“清川”に象徴される心の安寧
• 最後の舟と月のイメージに、はかない余韻と山水世界へのいざないが凝縮