[古典名詩] 積雨輞川荘作 - 輞川の山荘に降り積もる雨と自然の調和を描いた短詩

Composed at Wangchuan Retreat After Continuous Rains

Composed at Wangchuan Retreat After Continuous Rains - Wang Wei

/积雨辋川庄作 - 王维/

雨後の静寂と生命の調べが響く山荘

積雨空林煙火遲
雨が続き、林は静まりかえり、煙と炊事の火はゆっくりと立ち上る
After prolonged rain, the forest lies hushed; smoke and cooking fires rise slowly
蒸藜炊黍饗東菑
アカザを蒸し、キビを炊いて、東の畑へと運んでゆく
Steaming amaranth and cooking millet, carrying them to the eastern fields
漠漠水田飛白鷺
どこまでも広がる水田を、白鷺が舞い飛ぶ
Across the boundless flooded paddies, white egrets take flight
陰陰夏木囀黄鸝
深緑に覆われた夏の木立で、黄鶯がさえずる
In the lush shade of summer trees, golden orioles sing

この詩は、雨の続いたあとに広がる輞川(ぼうせん)の山荘周辺の情景を四行に凝縮して描いた王維の代表的な作品の一つです。王維は詩仏とも呼ばれるように、仏教的な静謐さや自然との一体感を作品に数多く盛り込みました。この作品においても、雨でしっとりと潤った空気感や、自然の中で営まれる素朴な暮らしぶりがあざやかに映し出されています。

第一句の「積雨空林煙火遲」は、「長く続く雨により、人の気配の少ない林には、煙や火の立ち上る様子も遅れて見える」という情景を描き出しています。雨が地面を潤し、空気に湿気が満ちる中で、人々の活動が穏やかなリズムとなっている様子が感じられます。

第二句の「蒸藜炊黍饗東菑」では、アカザなどの野草を蒸し、キビなどを炊いて東の田畑へ届けるという、素朴な農村の食事風景を示唆します。生活の香りが立ち上るような描写から、自然と人との繋がりや、季節ごとにめぐる恵みを受け取る人々の姿がうかがえます。

第三句の「漠漠水田飛白鷺」は、視野いっぱいに広がる田畑と、その上を優雅に飛ぶ白鷺が描かれています。雨上がりで水量の増えた田んぼの光景は、どこまでも広がる平坦な鏡のようでもあり、その中を白鷺が飛び交う様子は、詩全体に静かで清らかな美しさをもたらします。

最後の「陰陰夏木囀黄鸝」は、夏の深い緑に包まれた木立の中で、黄鶯(こうおう)がさえずる場面を示します。雨上がりの湿度の中、鳥の声が一層鮮明に響き渡ることで、自然の生命感が際立ちます。王維が描き出す光景は、観る者の心を清めるような静謐さと、自然そのものの豊かさを同時に感じさせるのが特徴です。

この詩を通じて私たちは、自然の深い調和の中で暮らす人々の姿や、雨に洗われた風景の神秘性に思いを馳せることができます。王維の巧みな筆致によって、わずか四行ながらも豊かな空気感と静かな生命力が漂う詩情に満ちた作品といえるでしょう。

要点

・雨上がりの静かな山荘風景と、人々の素朴な暮らしの描写
・自然と生活が融け合う王維の独特な詩情
・短い四行の中に広がる広大な田畑と鳥たちの生命感
・仏教的な静寂や自然との一体感を感じさせる作品
・日常の中に宿る美と、調和の大切さ

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