[古典名詩] 燕子龕禅師院 - 詩の概要

Swallow Cliff Hermitage

燕子龛禅师院 - 韦应物

燕子龕禅師院 - 韋応物

静寂の山寺に寄り添う雲

小峰日午寂,
小さな峰に日が高く昇ると、あたりは深い静寂に包まれる。
When the sun climbs high above the small peak, everything falls into profound silence.
殿閣影冥冥。
殿閣は薄暗い影の中に沈み込むように佇む。
The halls and towers stand in dim, shadowy stillness.
古木入僧舍,
古木の枝先は僧房へと入り込み、歴史の深みを感じさせる。
Ancient trees extend their limbs into the monks’ quarters, echoing an age-old serenity.
白雲依磬聲。
白雲は法具の磬(けい)の音に寄り添うように漂う。
White clouds drift, clinging gently to the chime of the temple bell.

この詩は、山間にある禅師院の静謐な情景を描いた作品です。韋応物は盛唐の詩人の一人であり、官僚としての経験から多くの地方をめぐりながら、自然と人間の調和をテーマとした数多くの詩を残しました。本作も、山寺の深い静寂と古木、そしてそこに響く磬(けい)の音や漂う白雲を通して、見る者・読む者に心の安寧を感じさせる一篇です。

冒頭で示されるのは、昼の日差しが峰を照らしながらも、なお静寂が満ちる山間の世界。殿閣が薄暗い影を帯びている様子は、時間がゆったりと流れる空間を象徴しています。やがて古木の枝が僧房へと伸び込み、その歴史の深さや寺院の由緒ある佇まいを感じさせます。最後に登場する白雲は、法具である磬の音色と共鳴するように漂い、山寺全体を浄化するかのような静かな雰囲気を強調しています。

四句から成る短い詩でありながら、視覚的・聴覚的なイメージが凝縮されており、詩人の繊細な観察眼がうかがえます。淡々とした描写の中に、読者の心を澄ませる要素が詰まっているのが韋応物の特徴と言えます。山寺での修行や瞑想の空気感、自然と人の営みが融け合う世界観が、そのまま私たちの心にやすらぎを与えてくれるでしょう。

要点

・山間の寺院に広がる静寂と深い趣が鮮明に描かれている
・古木や白雲など、自然の要素が寺院の雰囲気を一層際立たせる
・磬の音が象徴する仏教的な厳かさと静寂の融合が印象的
・短い描写の中に心の安寧や精神的な深みを感じさせる一作

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